No.3 超高品位VRミュージアムモデルの構築 戻る

三木哲也教授▲島根県産業技術センター 情報デザイン科 
泉堅二主任研究員

島根県産業技術センター 情報デザイン科 泉賢二主任研究員

インタビュー実施:2003年10月3日(於:ソフトビジネスパーク島根内 島根県産業技術センター)

◆はじめに
 高品位のブロードバンドコンテンツを対象としたVRミュージアムモデルの研究開発で大きな成果を挙げていらっしゃる島根県産業技術センターの泉主任研究員を訪問しました。
 

大型VR情報端末
▲大型VR情報端末
「Reality Station」
(クリックで拡大)

3次元表示装置用画像撮影装置
▲3次元表示装置用画像撮影装置
「iMOB MAKER」
(クリックで拡大)

研究の概要

 超高品位VRミュージアムモデルの研究開発は、平成11年から開始しており、ほぼJGNの運用開始時期と重なっています。このことは、高品位のブロードバンドコンテンツを研究対象とする良いきっかけとなりました。
 研究開発開始当初から製品化を前提としており、装置そのもののデザインも、ユニバーサルデザインの観点から老人、子供、障害者の利用を考慮し、コンパクトで利用しやすく、価格も既存のシステムに比べ低コストでの実現を目指しています。
 本モデルは、大型VR情報端末「Reality Station」のほか、汎用Web3Dデータ作成装置として「VISTA MAKER」(パノラマ映像撮影装置)、「iMOB MAKER」(3次元表示装置用画像撮影装置)、絵画などの大型平面画像入力装置が開発されており、現在製品化前の実証実験を行なっています。
 既存のVRシステムはパソコンとハイビジョンを組み合わせて実現したものが多いですが、本研究における、ストリーミングや高精細画像をネットワークを利用して表示するシステムがVRを実現するシステムの基準となると良いと考えています。

これまでの成果

 本研究の一環で開発された大型VR情報端末は「Reality Station」の名前で製品化しており、ライセンス契約した大手企業により本格的な事業化が進められています。この企業はこれまで共同研究を行ってきた企業とは別で、開発成果としてのシステムの画像処理部分が注目され、事業化の運びとなりました。製品の価格は、美術館など自治体での購入が可能なレベルに抑えることができると考えています。
 また、大型VR情報端末はすでに出雲市に購入していただき、出雲科学館に常設されています。大型VR端末では、「太陽系の惑星たち」、「出雲の地質」、「ミクロの世界」といった完成度の高いコンテンツが提供され、子供たちの人気を集めています。さらに、今年度末までには県立美術館にも設置される予定です。県立美術館で提供されるコンテンツは、3年前から作成が開始され、現在「しまねバーチャルミュージアム」のWebサイトで公開されています。
 バーチャルミュージアムのコンテンツ作成には、美術館の学芸員の協力が不可欠であり、信頼関係を築くのに時間を要しましたが、提供されるコンテンツの品質の高さ(画像はどれも数十メガから数百メガ程度の高精細画像を利用)を示すことにより信頼を得るにいたりました。

社会的貢献

 開発された技術は、地元企業にも積極的に技術移転しており、3年前に設立された有限会社テクノキューブがライセンス契約して汎用Web3Dデータ作成装置を利用したコンテンツの作成を行なっています。出雲科学館の大型VR情報端末で提供されているコンテンツも同社が作成したものです。
また、標準化の提案を具体的に行っているわけではありませんが、老人、子供、障害者の利用を考えたユニバーサルデザインの「Reality Station」が普及することにより、今後の情報端末の標準となってくれることを期待しています。
さらに、JGNに関係する部分だけでなく、システム全体として特許6件、意匠登録3件、商標4件を取得及び申請中です。


研究室前に掲示されているパネル
研究室前に掲示されているパネル
(クリックで拡大)

JGNについて

 本研究の開始と、JGNの運用開始時期が重なっていたため、JGNの利用を前提とした高品位ブロードバンドコンテンツを研究対象とすることができました。また、島根県産業技術センターのあるソフトビジネスパーク島根内は、県の予算ですべての建物にJGNへの足回り回線が整備されているため非常に助かりました。
 課題としては、利用時に共同研究機関からの同時申請が必要であるため、遠隔地での共同実験の場合にはその調整に苦労するということもありました。

◆おわりに

 古来から多くの神話を持ち、出雲大社をはじめとする貴重な文化遺産に恵まれた出雲の地には、豊富なコンテンツが溢れています。超高品位VRミュージアムモデルの研究開発は、このような地域背景に支えられて着実な成果を挙げていることが感じられました。出雲の「神在月」に取材を行なったことで、この感を一層強くしました。

文責:JGNウェブ編集部

関連リンク集

島根県産業技術センター
ソフトビジネスパーク島根

出雲科学館
島根県立美術館
しまねバーチャルミュージアム
(有)テクノキューブ

ギガビットラボVODコンテンツ

JGNウェブ編集部では、インタビューに協力していただけるJGNプロジェクト研究者を募集しています。 自薦、他薦等、JGNウェブ編集部まで、氏名、メールアドレス、電話番号、JGNプロジェクト番号を添えてお知らせくださいますようお願いいたします。
 

お問い合せホームページへのお問い合せ Copyright (C) 2004 TAO All Rights Reserved.