JGN IPv6ネットワーク等の超高速インターネットのトラフィックを収集するため、GPS(Global Positioning System)ユニットを内蔵したIPメータ装置を開発し、様々なネットワークの測定と解析を行っている。
最近のインターネットではWWW等のデータ伝送に加えて、映像・音声などのアプリケーションが広く利用されるようになってきており、ネットワークの品質に対する要求がより多様になっている。アプリケーションの品質には、ネットワークを通過するIPパケットの遅延とジッタが大きな影響を与えるため、これらのパラメータを正確に測定することが重要である。
一般に、高速なネットワークを通過するIPパケットの間隔はより小さくなるため、IPパケットの通過する正確な時刻を測定することは困難になってくる。例えば、1Gbpsの回線速度では0.5〜12マイクロ秒の時刻情報の精度が必要である。しかしながら、一般に利用されているトラフィック収集ソフトウェアでは1マイクロ秒程度の時刻精度を取得することは困難である。
そこで、GPSの高精度時刻情報を受信するユニットを内蔵したIPメータ装置を開発した。本装置を用いることにより、100ナノ秒単位の正確な時刻情報を取得してIPパケットに付加し収集することを可能にした。本装置を用いて、実際に様々なIPv6ネットワークの測定とトラフィック解析を実施している。
本IPメータ装置を用いて、JGNをはじめとする様々なネットワークのトラフィック収集と解析を行っている。これまでの主なトラフィック収集実験として以下のようなものを実施している。
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JGNシンポジウムにおけるIPv6ネットワーク上の映像伝送トラフィックの収集
- IPv6商用ADSLアクセスネットワークのトラフィック測定と遅延解析
- IETF横浜会合におけるIPv4/v6トラフィックの収集
ここでは、得られた成果の一部として、JGNv6ネットワークとIPv6 ADSLネットワーク間のトラフィック測定と遅延解析について紹介する。
最近ADSL等で商用あるいは実験IPv6アクセスサービスが提供され始めている。そこで、ADSLアクセスネットワークにおける片方向遅延の厳密な測定実験を実施した。実験の構成を図2に示す。本実験では、ADSL利用者側とJGN IPv6ネットワーク内部に、GPSによって時刻同期されたIPメータ装置を設置し、ネットワークを通過するUDPパケットを、高精度時刻情報を付加して収集することにより、2測定点間での正確な伝送遅延の測定を実現している。
実験の結果、ADSLのような非対称のネットワークにおいては、利用者から見た上り方向と下り方向で遅延の大きさと性質が異なることが分かった。下り方向の遅延よりも登り方向の遅延が平均的に大きい。また、時間帯によって下り方向の遅延のゆれ(ジッタ)が大きくなるという傾向が見られた。