サイバー関西には、電通や朝日放送というコンテンツ系の企業が参加していますが、
ネットワーク技術系の企業とカルチャーの違いを感じたエピソードなどありましたら教えてください。
(下條教授) 例えば、朝日放送の香取氏は、マスコミ業界の人間という雰囲気が少ないし・・、そういうカルチャーギャップはあまり感じません。
あまりおもしろいエピソードとは言えませんが、最近はコンテンツが商品であるという意識が強くなってきて、コンテンツの取り扱いが難しくなりました。例えば、APECの時は、朝日放送のニュースをダイジェストして配信していましたが、番組を編集する権利を開放するなんていうのは、いまなら考えられません。絶対にOKがでないと思います。ビジネス化が目前に来ているので、そういう大らかさはなくなりつつあります。コンテンツ系の会社は、コンテンツそのものが商品なので特に厳しいです。
NTT西日本の貢献は大きいですか?
(下條教授) サイバー関西におけるNTT西日本の貢献は非常に大きいです。大きくなりすぎたくらい(笑)。例えば、JGNはバックボーンですから、足回り回線の確保が問題になります。そこでもNTT西日本の協力は大きいです。しかし、言うまでもなく、NTT西日本はスポンサーにとどまらず、研究における重要なプレイヤーです。
また、白波瀬氏らがNTTスマートコネクトというコンテンツ配信に特化した会社を立ちあげました。アメリカではインクトゥミやアカマイなどコンテンツ配信系の技術開発を行なっている企業はいくつかありますが、日本では手薄になっているところです。NTTスマートコネクトは朝日放送を始めメディア系の企業にサービスを提供しています。
ビジネスが始まったことで逆に研究課題が見つかったところもありますか?
(下條教授) コンテンツ・ロジスティックのテーマもここから始まったと思います。やはりビジネスになると、具体的なテーマがいろいろ出てきます。
コンテンツ配信の技術開発というとストリーミングソフトを開発することですか?
(下條教授) 違います。ストリーミング再生ソフトには、RealPlayerやMicrosoftのWindowsMediaPlayerを使う場合が多いです。しかし、視聴者をカテゴリに分けて付加情報を流す技術とか、いろいろ技術開発が必要なテーマは多いのです。
(山口陽一氏) NTTスマートコネクトでも、最初は単純なストリーミングデータの配信だけだったのが、だんだんユーザの情報を戻す機能を付加するなど具体的ニーズに対応していく形でサービスメニューを充実させました。
話は変わりますが、関西でプロジェクトをやることに、メリット・デメリットはありますか?
(下條教授) 奈良先端技術大学院大学の山口英さんとも話すのですが、東京に呼ばれることが非常に多くて、移動時間だけでもバカにならないのです。オール関西で実験できることで、それが節約できるのがまず大きいですね。中央から遠いので情報が入りにくい面もありますが、雑音がなくてやりやすいと見ることもできます。
(吉田幹氏) 各家庭への足回り回線が100メガ(100Mbps)になるのはもうすぐです。九州工業大学の尾家祐二先生も指摘していることですが、現状のように何でも東京からの折り返すトラフィックばかりではバックボーンが破綻します。地域のものは地域で折り返す必要があります。だから、大阪も九州も地域内のトラフィックは地域内で処理する能力も必要だし、何よりもそれを運用する人が必要です。
今後、重点的に取り組もうと考えていることはどういうことでしょうか?
(下條教授) まずは、ブランドとしてのサイバー関西を育てていきたいです。
メーカーへのプレゼンスは割と大きくなってきて、サイバー関西で使われるということに積極的になってきています。今後はメーカー以外にも、コンテンツとネットワークの組み合わせのテーマならサイバー関西だと言われるように、ブランドを育てていきたいと考えています。
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