Vol.10 JGNネットワークオペレーションセンター(JGN-NOC) バックナンバー

佐藤利彦氏
▲JGNネットワークオペレーションセンター 佐藤利彦氏

佐藤利彦氏
▲JGNネットワークオペレーションセンターで説明をする佐藤利彦氏(クリックで拡大します)

畠中照明氏
▲JGNネットワークオペレーションセンター 畠中照明氏

JGNオペレーションセンタの業務
▲JGNネットワークオペレーションセンターの業務(クリックで拡大します)

JGNネットワークオペレーションセンター 佐藤利彦氏、畠中照明氏
インタビュー実施:2001年2月18日(於:東京都千代田区大手町JGN-NOC)
◆はじめに
 研究開発用ギガビットネットワークを運用しているのが、JGNネットワークオペレーションセンターです。JGNユーザにとってなじみの深いアクセスポイントの運営などを一手に引き受けておられます。今回は、ネットワークのプロフェッショナルのためのネットワークをサービスしておられる方々に、JGNのネットワークオペレーションについて語っていただきました。
JGNネットワークオペレーションセンターの業務の範囲を教えてください。

 TAO資産である交換設備と、回線設備の管理を一元的に引き受けているのが、JGNネットワークオペレーションセンター(通称、JGN-NOC)になります。

 最近、JGNではIPv6ネットワークの運用が開始されましたが、これは対象外であり、JGN大手町IPv6システム運用技術開発センターが運営を行っています。

 ネットワーク的にはATMのUBR-PVCサービスが原則です。OSIのレイヤモデルで言えば原則として、レイヤ0〜レイヤ2までということになります。

UBR-PVCサービスが原則ということを、もう少し詳しく話していただけますか。

 UBRというのは帯域保証がないということです。これに対してCBRが、帯域保証のあるサービスです。JGNではCBRによる帯域保証の利用は、一次利用の場合に使えるということになっています。動画伝送などではセル落ちを気にされる方が多いので、イベント利用にはよく使われています。また、PVPの利用も可能です。研究者によっては、PVPの割り当てを受けて、その中に自分でPVCを設定して使う方がおられます。PVPの方は期間限定ということではありませんが、原則PVCですので、PVCからPVPへの変更申し込みが必要になります。

全国のアクセスポイントの運営もこちらであると考えてよろしいのでしょうか?

 はい。大学の計算機センターや自治体の施設など全国で64箇所にあるアクセスポイントを遠隔監視し、一元的に運用しています。
研究者にとっての接続の流れはどのようになりますか?

 研究者は、TAOとの研究契約をします。同時にTAOギガビットセンターはJGNネットワークオペレーションセンターへパス設計および設定を依頼します。JGNネットワークオペレーションセンターは回線設計をし回答(JGN利用条件)をTAOギガビットセンターへ返します。TAOギガビットセンターは、JGN利用条件を研究者へ返します。その後研究者は足回り回線を確保し、必要機器等の設定をし研究を開始するという手順になります。

ATMマルチキャストの利用もされていると聞いています。
 これもイベントなどでよく使われます。これまで8回行いました。利用者側から見ると問題なく使えるようになっています。
運用サイドでは、かなり大変なのでしょうか?
 こちらでは、5種類のATM交換機からなるマルチベンダ環境で運用していますので、それぞれのATM交換機によって設定の仕方が異なります。イベントがあるときにも、通常の利用者がおられるので迷惑がかからないようにしないといけません。ATMマルチキャストは、ATM交換機でデータをコピーして分岐させる必要があるのですが、それをどこでやるかが問題になります。トポロジー的には多少変でも空いているのはここしかないから・・等と職人技的に構成していくことが実際には必要になります。
イベント関係で、ATMマルチキャスト以外に大変なことはありますか。

 イベントのときに問題になるのは、会場までの接続がイベントの直前になることが多いということです。会場の使用が前日から可能になる場合などがあるので、エンド-エンドでの接続確認(導通試験)が前日になることがおります。どうしても時間が足りず、チューニングが不足することが起こります。

 申込み自身はルール上、イベントの1ヶ月前までに行うということになっています。イベントの1ヶ月前に申込みがあれば、ATMマルチキャストの利用も十分可能です。1ヶ月前までに申し込む必要があるもう一つの意味は、イベントが重なったときの調整が必要なためです。過去にも実際にイベントが重なったことがありました。

イベントのために太い帯域を確保すると言っても、機器の設定作業が多くなるわけではないですよね?

 例えば50Mしかない帯域に、40MのCBRを張ると、いつもそこを使っているユーザにとって10Mしか残りません。影響は非常に大きくなります。回避するやり方はないのか調べたり、影響に関する問い合わせに対応したりと種々のことが必要になります。

よくある問い合わせはどのようなものがありますか?

 JGNホームページ中にもFAQの記載があります。これは、JGNネットワークオペレーションセンターへのよくある問合せを集めたものです。こちらにも掲載されていますが、JGNまでのアクセス回線(足回り)に関するものが多いですね。

アクセス回線との接続での問い合わせとは、具体的にはどのようなものですか?

 150Mの物理インタフェース(OC-3)が使われるケースが最も一般的ですが、長距離用のシングルモードと短距離用のマルチモードがあります。接続装置によってはシングルモードのみに対応している場合があります。こうした点についての質問もあります。例えば30Mや40Mの足回りを契約する場合にも、この150Mのインタフェースを使うケースが一般的です。600Mの物理インタフェース(OC-12)も使われています。
 

Champion
▲JGNのATM網全体を監視するシステム(Champion)画面。
図をクリックすると拡大されます

各ATM交換機種別毎に監視するシステム
▲各ATM交換機種別毎に監視するシステムも作られています。
図をクリックすると拡大されます。

ATM網監視システム画面。
▲ATM網監視システム画面。
図をクリックすると拡大されます。

リモートオペレーション風景
▲リモートオペレーション風景。
図をクリックすると拡大されます。

問い合わせで苦労されている点はありますか?

  JGNにはネットワーク以外の研究が専門の方もおられます。物理的な接続やATMのレイヤーが私たちの業務の範囲なのですが、アプリケーションのレイヤーでの質問も含まれます。そうした場合には、ネットワーク研究者とのやり取りのようにスムーズに行かない面があります。本来の業務ではありませんがアプリケーションレイヤーの質問でも分かる範囲でお答えするようにはしています。
苦労されている点が、他にありますか。

 展示会のようなイベントでは、イベントが長期にわたる場合があります。土日が含まれることも多いですが、監視体制を取る場合もあります。

 アクセスポイントが各都道府県に最低一つある状況ですから、土日などには法定点検が行われている場合が多いので、連絡が滞るとトラブルの原因になります。沖縄でのシンポでも停電が原因のトラブルがありましたが、最近の連絡体制はよくなってきました。

 これだけネットワークの規模が大きくなると、いろいろと計画工事(道路工事や橋梁工事による回線支障)が出てきます。公共工事に関わる計画工事には協力するように努力していますが、研究者の迷惑にならないように深夜(明朝)に実施していただくなど最善を尽くしています。計画工事については、本ホームページからの工事・保守情報で確認できます。原則、研究契約を締結している研究者のみへの公開になります。パスワードはJGNネットワークオペレーションセンターへお問い合わせください。

 トラブルが起こったときに、故障原因の切り分けツールがありますが、ユーザにとってはエンド-エンドでの通信がうまく行かないと納得しがたい面があります。そのあたりは十分配意し説明しております。

ネットワーク監視のツールがかなり充実しているように見えますが、
   JGNができた最初からこのようなツールがあったのでしょうか?

 マルチベンダ構成となっている各種SW類にはChampionという統合監視ツールが当初からありましたが、トラヒック関係につきましてはユーザの要望などを受けて徐々に充実させてきておりのトラヒックはすべて一元的に管理できています。

研究者と接して感じる点などはありますか?

 計画工事等での中断にも御理解を示していただけますのでその面では非常に助かってます。研究者の方はトラブル等の原因よりも今NWがどのような状況にあるのか明確に把握できることを望まれているようです。

 ネットワークでは、利用の自由と運用ルールのバランスが重要だと思います。ルールがなくては何も運用できませんが、厳しすぎてもそこでの活動が制限されます。特に、研究活動のためには利用の自由が重要です。JGNは、かなり利用の自由を重視した運用が行われてきたのではないかと思います。

 ネットワーク監視ツールで見ていると、あるアクセスポイントでのエラー警告が出ているとします。機器の故障かと調べてみると、研究者の先生が光ケーブルを抜いていた、などというようなことがあります。最近は、「前後関係」から本物の機器故障とケーブルの抜き差しかが経験的にわかってきました。このように研究用に自由かつ積極的に使用されていることがよくわかります。

JGN IPv6サービスは、研究者自ら運用するということになりましたね。
 個人的な意見ですが、かなり新しい技術については、運用と研究は一体であるべきだとおもいます。運用することが問題点の発見にもつながりますし、研究にもなりますから。技術が枯れてくれば、運用部分をサービスのプロが行うべきだと思います。IPv6は新しい技術ですから、研究者の方々が自ら運用されるほうがよいと思います。
 
  ◆おわりに

 各都道府県に最低一つのアクセスポイントが整備され、全国では64箇所を数えるに至っています。これだけ大規模なネットワークの運用には、日本全国のネットワークを一目で監視できるツールなどの仕掛けがあって成り立っているのだということがよくわかりました。

 このホームページ中にも、JGNの手続き面や技術的な情報が数多く掲載されています。利用者の方々にとって、わかりやすいページを目指しておりますので、ご意見等ぜひお寄せいただきたいと考えております。

JGNネットワークオペレーションセンター連絡先

メールアドレス:jgn-noc@ntt.com
電話番号:0120-884-548
FAX番号:03-3510-2913
営業時間:平日(月曜日〜金曜日) 9:00〜17:00
(土日祝日、年末年始12/29-1/3、および平日の上記以外の時間帯は営業しておりません)

文責:JGNウェブ編集部

 
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