ギガラボインタビュー VOL.1:京都情報通信研究開発支援センター(京都ラボ) 戻る

古川尚武 センター長
通信・放送機構 京都情報通信研究開発支援センター
古川尚武 センター長

中尾浩治主任研究員
通信・放送機構 京都情報通信研究開発支援センター
中尾浩治主任研究員

今中由美氏
松下電器産業株式会社 くらしネットワーク開発センター 副参事 今中由美氏

「精華町『健康ネットワークサービス』実証実験」
通信・放送機構 京都情報通信研究開発支援センター センター長 古川尚武 氏
通信・放送機構 京都情報通信研究開発支援センター 主任研究員 中尾浩治 氏
通信・放送機構 京都情報通信研究開発支援センター 研究指導員 西脇利勝 氏
通信・放送機構 京都情報通信研究開発支援センター 研究指導員 川勝正洋 氏
松下電器産業株式会社 くらしネットワーク開発センター 副参事 今中由美 氏

インタビュー実施:2002年 4月 19日
(於:京都情報通信研究開発支援センター(京都ラボ))

◆はじめに

 今月から、3ヶ月に1回のペースで全国に5つあり共同利用型研究開発施設として地域の研究者等に広く活用されているギガビットラボを訪問し、活動内容を紹介していただきます。今月は、京都ギガビットラボを訪問し、「精華町『健康ネットワークサービス』実証実験」について伺いました。

京都ギガビットラボの皆様
京都ギガビットラボの皆様と松下電器産業株式会社 くらしネットワーク開発センター副参事 今中由美氏
研究の概要について教えてください。

(今中)この実験は、平成11年度から5年間の計画で実施しています。目的はITを活用した健康情報サービスによって住民のみなさんの健康で楽しい毎日を応援することです。

 初年度はホームページによる健康コンテンツ(ダイエットナビ・ダイエットラリー)によるバーチャルなサービスを、次年度にはバーチャルサービスに加え、化粧品会社と共催で美容講習というリアルサービスも実施しました。

 また、昨年からは当社開発の「電子健康チェッカー」を使用した在宅ヘルスケア支援サービスの実証実験を行っています。これは住民(生活習慣病患者)とその主治医をネットで繋ぎ、住民が自宅に居ながら検診・健康アドバイスが受けられるサービスを目指したものです。


▲実証実験イメージ(図をクリックすると拡大されます)

在宅ヘルスケア支援システム 専用端末
▲在宅ヘルスケア支援システム 専用端末(クリックすると拡大されます)


システム構成としては、住民(モニタ)宅に専用端末(電子健康チェッカー)を設置し、医師はPCを使います。この専用端末はお年寄りにも簡単に使っていただけるようタッチパネル操作を採用しています。血圧・血糖値・体重などのデータを自動入力し、そのデータを医師がチェックし、メール機能を使って適切なアドバイスを送信することができます。
TV電話機能を使えばお互いに相手の顔を見ながら話をすることもできます。

血糖計は、採血が必要なのではないですか?

(今中)採血は必要です。ここでは通信機能付の家庭用血糖値計を使用していますが、米粒程度の量で計測できます。
  住民と医師の間の回線スピードはどうなっていましたか?
(今中)回線スピードは使用する回線によって異なりますが、昨年の実験では64kbpsでした。TV電話では顔色などははっきりしませんでしたので診察には無理がありましたが、コミュニケーションには十分使えることが分かりました。
TV電話はどのような技術を使っていたのでしょうか?
(中尾)IPのネットミーティングの技術を使っています。
モニタの反応はいかがだったのでしょうか?
(古川)参加したモニタの評判は非常に良いものでした。いつも先生にそばに居てもらえる感じで、生活習慣病への取り組みのモチベーションが上がったと言っておられました。家に居ながらにして毎日先生に見てもらえるのですから。
お医者様サイドの評判はどうだったのでしょうか?
(古川)医者の負担は大きいということで、大変だったとおっしゃっておられました。このあたりをどう合理化するかが課題だと分かりました。
実験に参加したお医者様はどういうつながりでお願いすることになったのですか?
(古川)医師は、精華町の医師会から紹介いただきました。
具体的な商品につながったのでしょうか?
(今中)このシステムでは今のところ一般家庭に買っていただくというものではなく、自治体の住民の健康福祉として、また、病院の患者サービスとして使っていただけるような提案をしています。その中で今年の4月に岡山県阿新地域の自治体に導入させていただきました。公民館に住民端末を設置し、保健婦さんがPCでデータを管理する仕組みです。精華町での実証実験ではどのようなビジネスモデルが成り立つのかも探りたいと考えています。
ダイエットラリーという企画について教えてください。
(古川)ダイエットラリーは平成11年に開始し、主として平成12年度に実験を行いました。(今中)これは、ともすれば3日坊主になりがちなダイエットをみんなで一緒にゲーム感覚でやろうというものでした。40人ほどの参加があり、盛り上がりました。万歩計を身につけて一日に歩いた歩数などの情報を記入していきます。禁煙というメニューもありました。保健衛生の専門家にも入って側面支援をいただきました。
専門家がおられるとゲームに過熱しすぎる心配がなくて安心ですね。
(古川)そうですね。過熱しすぎるということはなかったようです。
セットトップボックス型端末
▲精華町で用いられているセットトップボックス型端末(クリックすると拡大されます)
住民モニタがおられるのが京都ラボの特徴ですね。
(古川)そうですね。京都府精華町と京都府園部町に住民モニタがおられます。住民参加型の社会的実証実験ができる点が京都ラボの特徴だと思います。一般のISDNのユーザもおられますし、CATVインターネットのユーザもおられます。また、病院・学校とは専用線で結ばれています。CATVインターネットのユーザとして、園部町ではパソコンが使われていますが、精華町ではセットトップボックスが使われています。このようにバラエティに富むところも特徴です。
モニタユーザの募集はどのようにして行ったのですか?
(古川)住民に対する公募を行いました。半月ほどの応募期間しかなかったにもかかわらず多くの応募がありました。チラシを配ったりしたこともありますし、もともと住民のネットワークへの関心が強いこともあったかと思います。
モニタ数としての世帯数はどの程度ですか
(古川)精華町には、CATVの回線を使ったモニタ数が350世帯、ISDNの回線を使ったモニタ数が150世帯おられます。園部町には、CATVの回線を使ったモニタ数が250世帯おられます。
地元の情報通信環境の向上に寄与したのでしょうか?
(中尾)平成11年当時は、地元のCATV会社(株式会社キネット)のインターネットサービスがありませんでしたが、この事業が契機になってインターネットサービスが始まったのではないかと思います。
NPOの利用はありますか?
(古川)「せいかグローバルネットワーク」という国際交流関係の活動をしておられるグループからネットワーク関係やサーバ設置に関してご相談を受けています。
地元住民向けの情報提供を行っていますか?

(中尾)はい。「かしのき通信」というニュースレターのようなものを住民専用のウェブサイトに書いています。最初は、活用方法などマニュアル的な情報が多く、これらは評判が良いものでした。しかし、セットトップボックス自体がかなり使いやすいものですから、マニュアル的なものはなくても使えます。最近は、お祭りやイベントなどのお知らせも行うようにしています。

(古川)精華町では役場内に大型モニタがあるので、住民の方々に気軽に遠隔配信されている内容を見ていただいています。もっとも、画像が綺麗すぎてテレビとの違いがわかっていただけないようです。すばらしい技術を使っていても技術そのものに住民の方々の関心を向けるのは難しいことですね。つくばギガビットラボで開催されているつくばギガビットセミナーはいつも中継しています。昨年の沖縄でのギガビットシンポジウム2001の時は50人ほどの聴衆者がいました。

現在の課題はありますか?
(中尾)精華町の場合は、セットトップボックスですから、ブラウザのバージョンアップが容易ではありません。Javaを使ったページなどが見ることができないといった問題が出てきています。平成11年当時としては魅力的なサービスだったわけですが、最近ではやや機器として陳腐化してきています。メールもサーバ側にすべて保管するため容量制限があり、ヘビーユーザには物足りない面もあるようです。また「かしのき通信」の内容もマンネリ化しないように苦心しています。
今後の取り組みを教えてください。
(古川)住民からの情報発信をいかに促進しようかと考えています。ひとつには、映像コンテンツを撮影するための簡単なビデオカメラや編集機材を使ってもらうことも予定しています。TV局などのプロの方が使うにはまだまだなんでしょうが、家庭用ビデオカメラやPC上での動画編集システムも高性能になってきましたから、こうしたものを住民の方に気軽に使っていただいて情報発信の促進に役立てたいと考えています。 また、けいはんなラボは地理的に近いので連携体制も強化していくことにしています。
 
  ◆おわりに

 地域の住民モニタとの協力関係でユニークな研究を進められている京都ギガビットラボについてお話を伺いました。

 京都ギガビットラボは、近鉄京都線・新祝園駅またはJR(学研都市線)祝園駅下車徒歩10分の精華町庁舎内にあります。

お近くに御用の方は、立ち寄られてはいかがでしょうか。
インタビューにご協力いただいた京都ギガビットラボの皆様、松下電器産業(株)今中様に感謝いたします。

文責:JGNウェブ編集部

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京都府精華町
京都府園部町
松下電器産業(株)「在宅ヘルスケアソリューションシステムを開発」
せいかグローバルネットワーク
(株)キネット
 
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