JGN2 超高速・高機能研究開発テストベッドネットワーク
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第2回 インタビュー

 

相原玲二教授広島大学
情報メディア教育研究センター 相原玲二教授

インタビュー実施:2005年8月31日(於:大手町)

 インタビューの第二回である今回は、JGN2の利活用促進や研究開発の活性化の中心的な役割を担う利用促進部会長相原玲二教授に、この1年半ほどの活動を振り返りながら、JGN2利用促進の状況や今後の展望などについてお話しを伺いました。

 

---JGN2は2004年4月から運用が開始され、1年半ほどが経過したわけですが、この間の利用状況についてどのようなご感想をお持ちでしょうか。

 まず、JGN2の利用状況についてですが、数字的には順調に立ち上がったと言えるのではないでしょうか。「数字」というのは、利用申請数を指します。ただ、JGNが5年間進められてきて、その継続プロジェクトとしてJGN2への移行をもう少し工夫すれば、さらに幅広い利用が得られると思います。 JGNの最終段階において、アプリケーション分野の拡大が強調されていましたが、JGN2開始直後の利用者として、ネットワークアプリケーションの研究者が多いかというと、必ずしもそうではないようであり、今後、アプリケーション分野の研究開発の充実を図ることも課題のひとつと考えます。

---これまでJGNでは研究開発の段階であったものが、JGN2ではネットワークのインフラとして利用されているといった事例にはどのようなものがあるでしょうか。

 例えば、地域間相互接続実験プロジェクト(RIBB)では、JGNの時にはMPLS技術を中心としたインフラ技術の研究を行い、各地域のアクティビティを高め、人材育成や人的ネットワークを作りましたが、このプロジェクトはJGN2になって、インフラのみならず動画像伝送を中心にしたアプリケーション開発へと拡大しました。また、扱う動画像の種類もSD(DV)からHD(MPEG2)へと、その内容もどんどん高度化しています。もちろん、インフラ技術の研究も継続していますが、それを使ったアプリケーション開発へと軸足が変化してきています。

---では次に、これまでの利用促進部会の活動状況についてお聞かせ下さい。

 利用促進部会の目的は、産学官連携、JGN2の各地での利用という2項目になりますが、具体的には、地域協議会と連携し各地域でのJGN2利用促進に関する活動の支援及びJGN2に関する情報を各地域に流すことが目的であると考えています。地域で上手にネットワークを利用している事例を、他の地域の方々にも知ってもらいたいと思っています。

 そのため、できるだけいろいろな人に直接情報交換していただこうと思い、利用促進部会は原則として誰でも自由に参加できるオープンなメンバー構成としています。これまで3回開催された会議は毎回盛況で、100名近く集まって情報交換をしてもらえているので、それだけ関心が高いのだなと実感しています。地域の事情により、参加される方の役職、職場などまちまちですが、それが良かったのだと思います。

 このように部会全体のメンバーは人数が多いので、昨年度、部会の中に利用促進WGを設置しました。これは部会における特定目的の活動を、柔軟かつ集中的に進めるためのものです。そのWGでは、これまで必ずしもJGN2の利用が進んでない地域に焦点をあて、その原因を調査しました。WGのメンバーには、いくつかの地域を訪問していただき、地元の関係者から直接ヒアリングさせていただきました。

---利用促進部会の次のステップとして、今後どのような取り組みを考えていらっしゃるでしょうか。

 利用の少ない地域の活性化については、WGの結果などを受けて、わかりやすいパンフレットの作成等、広報手段の工夫や相談窓口の多様化など、さまざまな対策をすすめています。ただ、このWGの活動はJGN2前半の短期的なもので、今年度末には終了する予定です。

 JGN2は研究開発用テストベッドなので、全都道府県で等しく研究開発に利用されることはありえません。しかし今のJGN2が提供している機能がもうすこし変わり、さらに利用イメージが正しくかつ広く伝われば、利用者にとって利用までの敷居が下がり、より利用が進むと思います。

---具体的にはどのような機能が必要でしょうか。

 例えば、もう少しアプリケーションに近い機能まで提供できれば良いのではないかと思っています。JGNやJGN2ではDVTSなどを使ってテレビ品質のテレビ会議などができるようになってきましたが、それを実際に行うためには、まだかなりの努力と様々なノウハウが必要です。はじめて利用する人にとって敷居が高いのは事実です。JGN2として、アプリケーションを含めて完全にサポートすることはできないとしても、具体的な機器構成やコストの安いソフトの紹介、さらには機材の貸し出しやそのサポートなどにより利用が進むと思います。

 また、現在、IPv6マルチキャストも必ずしも容易には使えません。ネットワーク技術の知識を十分に持っている人でないと使いこなせません。映像を伝送する場合、1対1ではなく、1対多で使いたくなることがよくあります。したがってマルチキャストが自由に使えるサポート及び保守の体制があれば、動画像伝送アプリケーションの利用はもっと進むと思います。

---今後利用促進のために解決すべき課題は何だとお考えでしょうか。

 アプリケーションの支援をより手厚くし、IPv6の特徴、特性を活かした研究をどんどん増やす必要があると思います。IPv6を使った研究テーマは埋もれている可能性があります。うまくピックアップして、広くアピールしていきたいですね。

 例えば、多くの人が使えるデータを、多くの場所で提供し、皆で使える様な仕組みを構築したいと考えています。それを今、各地の気象データをリアルタイムに公開し地球環境を考えるプロジェクトLive E!で行っています。多くの場所にあるデータを一箇所に集める方法もありますが、利用者がそれぞれの目的に応じて、1つ1つの独立したセンサーから自由に生のデータを持ってこられる環境を作ることに意味があるのです。加工されていない生のデータを持ってきて、使う人の責任で、使う人の目的に合うように処理することで、自由度が高くなり、データを活用できる場が広がります。 現時点ではすべてのものがグローバルアドレスでつながる意味が、まだ十分理解されていません。今後部会等で地道に利用紹介をして広げていく必要があります。

---今後のJGN2に期待している点をお聞かせください。

 最大の期待は人材の育成です。ネットワークに関する理解は進んできましたが、最新のネットワーク技術に対応できる人は、地方にはほとんどいません。JGN2が各地域での人材育成のきっかけになればすばらしいことです。最新のネットワークに触れて、それを使って研究開発する人が各地域に増え、人材の層が厚くなればと思います。 また、JGN2利用者の研究開発分野はさまざまです。違った分野の人たちと、JGN2の利用を通じて新しい人的ネットワークができればいいなと思います。 アプリケーションの面で言えば、幅広い分野のプロジェクトが今後も出てきて欲しいですね。

---最後に、JGN2の今後の展開について、先生の研究も含め抱負をお聞かせください。

 IPv6が必ずしも活かされていないと思うので、IPv6の特長を生かした研究が進むことを期待しています。今のJGN2は今の最新技術を利用しています。技術は日々進歩しているので、それまでの技術の上に立って次のステップに進みます。研究成果がフィードバックされて、新しい研究が芽生えて、というそのサイクルを今後もどんどん繰り返すようにしていきたいですね。

 閉じたネットワークだけで行う研究開発と、JGN2のようなオープンなネットワークを使った研究とでは大きく意味が異なります。オープンなネットワークでは、想定外の事象が発生するので、研究開発者にとっては迷惑でもあるのですが、じつは非常にありがたいことなのです。研究者が実用を目指した新しいアプリケーションを開発する場合、完成前に実ネットワークに近い環境でテストができ、事前に問題点が明らかになることはとても重要です。場合によっては、開発中のシステムを他のプロジェクトに試しに使ってもらうこともできます。だからJGN2のようなテストベッド環境は今後も必要だと思います。

 

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