JGN2 超高速・高機能研究開発テストベッドネットワーク
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第3回 インタビュー

 

尾家祐二教授九州工業大学
情報工学部電子情報工学科 尾家祐二教授

インタビュー実施:2005年12月6日(火)(於:北九州JGN2リサーチセンター)

 JGN2関係者インタビューの第3回である今回は、NICTが実施主体として全国7箇所のリサーチセンターで行なわれている拠点研究の総括責任者であり、JGN2全体の研究推進の中心的な役割を担う研究推進部会長である尾家祐二教授に、この1年の活動を振り返りながら、JGN2の研究面での役割や今後の展望などについてお話しを伺いました。

 

---JGN2のこの1年半ほどの利用状況についてどのようなご感想をお持ちでしょうか。

 リサーチセンターの立場で利用という点から考えますと、JGNと比べると帯域が向上しています。世界的に見ても10Gbpsのテストベッドを構築できているのはよいことだと思いますし、JGN2がなければ先端的な研究ができなくなっていたと思われます。JGN2は国際ネットワークを含んでおり、運用でいろいろな苦労もあると聞いていますが、実験にあたっては様々な支援をしていただいています。例えばJGN2では光ファイバのレベルで回線を丸ごと利用できるようになり、このファイバを使って、実験室内でなく通常の屋外での実験が可能になるなど、興味深い実験ができるようになりました。これはJGNの時代ではできなかったことでした。

 また、JGNの延長ということになるのですが、地域のネットワーク利用の促進のために、有効に利用されていると思います。現在九州各県の自治体のネットワークを相互に接続して、ポリシーの違うネットワークをどうつなぐかという研究を行っていますが、ここでもJGN2がバックボーンの機能を果たしています。

---尾家先生は拠点研究の統括責任者として全国のリサーチセンターを統括されていらっしゃいますが、その研究の状況についてお聞かせ下さい。

 JGN2には東北、つくば、大手町、大阪、岡山、高知、北九州の7つのリサーチセンターがあります。本格的な研究が始まって、1年以上経過しており、現在うまく立ち上がってきています。各リサーチセンターがそれぞれ別のテーマを実施するのではなく、「高信頼コアネットワーク技術に関する研究開発」、「アクセス系ネットワーク技術に関する研究開発」、「拠点連携型資源共有技術に関する研究開発」、「プラットフォーム・アプリケーション技術に関する研究開発」といった大きな4つのテーマを協調しながら行っています。JGN2というとバックボーンの研究が主だと思われていますが、総務省の推進しているユビキタスネットワークという観点から、バックボーンの研究だけでなく、アクセス系のネットワーク、アプリケーションにも配慮しながらネットワークの研究を行うことも重要だということで、幅広いテーマを扱っています。

 リサーチセンターの間では、共有できる知見を交換しつつ研究を進めていくという機運があります。一方、各リサーチセンターで研究を行なう研究員の数はまだ非常に少なく、研究員だけでは様々な研究の推進が十分に行えないという部分もあるので、各センター間での連携はもちろん、リサーチセンターがコアとなることで大学等、外部の研究機関とも連携して研究を進めていきたいと思っています。
  その一環として、各リサーチセンター主宰のワークショップをこれまで4回開催しています。ワークショップではテーマを絞った研究発表が行なわれ、参加者の皆さんからも様々な意見をいただいています。たとえば、大阪大学中之島センターで行なわれた第4回のワークショップにおいても、「グリッドとセンサーネットワーク」をテーマに、地元の大学や企業から140名の方に参加していただきました。リサーチセンターの研究者もこういった場を利用して、自ら情報発信をしようとする機運が高くなっています。

 また、大手町は特別ですが、東北、つくば、北九州、大阪、高知、岡山等では地域の活動と密接とつながった研究開発を行なっています。北九州をはじめ各リサーチセンターには、特別研究員として産業界や大学から多数の研究者の参加をいただき、リサーチセンターの研究開発活動にご協力いただくという枠組みがあります。リサーチセンターの特別研究員には、研究の場と研究に必要な機器が提供され、ネットワークも自由に使って研究することができます。企業の研究の方向とマッチしている場合には、非常に使いやすい枠組みだと思っています。
  こういった工夫をしていくことで地域の拠点形成という点で効果が上がっていると思います。研究者が中央に集まって研究を行うのではなく、地域で研究開発の場が作られてきていると思います。

---リサーチセンターの活動状況についてお話いただきましたが、次に尾家先生のもう一つの立場である研究推進部会長として、JGN2全体の研究推進の状況についてお話いただけるでしょうか。

 研究推進部会では、外部の先生方の協力を得て、リサーチセンターで行う研究をはじめJGN2を活用して行う研究活動の推進を行っており、これに加え、現在は、ネットワーク、ミドルウェア、アプリケーションの3つの分野における研究重点テーマを定め、具体的な研究の推進を図っています。ネットワークは、既にリサーチセンターにおいて推進されていますので、こうした活動と連携を図った上で、一般の利用者による研究活動も総合的に推進していきたいと思っています。ミドルウェアの研究では、、奈良先端科学技術大学院大学の砂原先生が行なっているGRIDを動かすためのミドルウェアの研究があります。JGN2の上でプラネットラボのプロジェクトと連携して、JGN2の利用者を増やしていきたいと思っています。アプリケーションについては、東京大学の江崎先生を中心に、全国にセンサーを設置してデジタル百葉箱を構築する「Live E!」プロジェクトを推進したいと考えています。

 また新たな取り組みとして、研究開発テーマを探るために2005年11月にアイデアコンテストを実施しました。これまでは、専門家の方々がJGN2を利用した研究開発のアイデアを出して研究に取り組まれてきましたが、一般の方が考える斬新なアイデアも重要であると考えて、JGN2を利用したアイデアを募集いたしました。対象は高校生や大学生などを含めて、広く一般の方から募集しました。その結果、高校生からの応募を含め78件の応募があり、結構興味深いアイデアが出てきました。中には、放送関係の企業からの応募もあって、今後おもしろい研究の連携ができると思っています。

---研究推進部会として、今後積極的に対応したい内容はどのようなことでしょうか。

 リサーチセンターをコアにして、JGN2の拠点の研究をさらに推進したいですね。そのために、多くの方のご協力を得るための活動を並行して行っていきたいです。具体的にはワークショップとか、一般の方からの協力をいただく体制を整備していきたいです。 さらに今回行なったアイデアコンテストなど、様々なアイデアを集める活動を続けていきたいと思います。

 ネットワーク技術やミドルウェアの技術の一部に関しましては、各リサーチセンターにおいて特別研究員の方々によって推進可能と思っていますが、アプリケーション技術については、単体で推進するリサーチセンターがありませんので、研究推進部会の取り組みと連携して研究開発を推進していければと思っています。

---研究促進のために解決すべき課題があればお聞かせ下さい

 各センターに拠点研究員が1〜3名いますが、この人数では、研究を推進するのには不十分であり、大学の研究室程度の規模があるといいと思うところです。研究員が行える研究には限界がありますが、JGN2の拠点研究への期待には大きなものがあります。したがって研究開発をうまく推進していくためには、繰り返しになりますが、リサーチセンターがコアになって、いかに協力いただける研究者を増やすかが重要だと思います。そのための方法のひとつとして、企業からの協力が得やすいような知的所有権の扱いについて、検討していくことが必要ではないでしょうか。また、大学からの協力については、特別の予算が確保されているわけではないので、是非研究のための予算措置をしていただければと思います。

 さらにリサーチセンターに来れば、何かおもしろいことがあると思ってもらえるように様々な取り組みをしています。例えば、北九州リサーチセンター内に産学官連携の場を作っており、ここに最新の情報をあつめることで、来る人のメリットが増えると考えています。

---研究推進していくにあたって、JGN2にどのようなことを期待されているでしょうか。

 まず、バックボーンをどう運用管理するかという点について継続して研究してもらいたいです。また、JGN2では多様な実験環境を提供してもらっていますが、多様性という面から言うと、アクセス系のネットワークも検討していく必要があると思います。近い将来、無線、高速ワイアレスネットワークが浸透すると思われますが、そのようなネットワークもJGN2につながっていくとおもしろくなると思います。ユビキタスはアクセス系のネットワークとつながりが深いので、是非JGN2に接続させたいですね。

 また、新しい環境にアップグレードしていってもらいたいと思っています。バックボーンであると予算的に負荷が大きくなりますが、アクセス系であれば予算的に負荷を余りかけずに簡単に新しい技術を取り込めると思っています。具体的には、これからのネットワークはクラスター型になると思いますので、それに対応した環境の整備が必要になってくるのではないでしょうか。まずバックボーンがあって、それに様々な特徴あるネットワークがブドウの房のようにつながっていて、それに様々なアクセス系を使って接続できるようになっていくことで将来のユビキタスネットワークの研究を行うことができるようになります。それに伴いセキュリティの研究も必要になりますね。

---最後に、今後の展望についてお聞かせください。

 ユビキタスネットワーク社会の実現に向けてこれからも研究開発がすすめられていくでしょう。その時に私たちのネットワーク社会がどうなるのかという部分を研究開発するテストベッドが必要だと思っています。新しいものを考えるときは、紙の上や計算機の上だけでなく、実際に作って動かしてみて検証する必要があります。JGN2に焦点を当てると、研究活動を下支えするような、ネットワーク自体が進化していくテストベッドが必要となるでしょう。社会のニーズに応えながら変化していけるネットワーク・アーキテクチャが求められるのではないでしょうか。

 今でも様々なアプリケーションが動いていますが、JGN2のネットワーク・アーキテクチャ自身はシンプルなままです。したがって、アプリケーション側で対応している部分がまだあります。多様なアプリケーションがネットワーク上で動くと、ネットワークがうまく応えるような仕組みが新しい機能として必要になってくるのではないでしょうか。

 利用者に対して、自由に利用してもらうというだけではなく、利用者が使いやすいネットワーク・アーキテクチャがあるのではないかと思います。そのための研究課題の抽出についても、今後行っていきたいですね。

 

 

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