JGN2 超高速・高機能研究開発テストベッドネットワーク
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第5回 インタビュー

 

北九州JGN2リサーチセンター
主席拠点研究員
九州工業大学情報工学部電子情報工学科 鶴正人助教授

インタビュー実施:2005年12月6日(火)(於:北九州JGN2リサーチセンター)

   ※ 2006年4月1日、九州リサーチセンターに名称変更されました。

 これまでのインタビューで各部会長からお話を伺うことで、JGN2全体の方向性や、ネットワークの利用促進に対する方針、海外との連携、研究推進の今後など、JGN2における重要なテーマについて明確になったかと思います。
  また第3回のインタビューでは、研究推進部会長の尾家先生からリサーチセンターについても詳しいお話を伺うことができましたが、今回からは、そのリサーチセンターの活動についてご紹介していきます。第1回としては、JGN2研究開発プロジェクト総括責任者である尾家祐二教授がセンター長を務められる北九州JGN2リサーチセンターにお伺いし、主席拠点研究員である鶴正人助教授に研究内容や今後の展望などについてお話を伺いました。

 

---まず、北九州JGN2リサーチセンターで行っている研究開発の内容や体制などについてお聞かせ下さい。

 北九州JGN2リサーチセンターでは、アクセス系ネットワーク技術について3つの柱を立てて研究を行なっています。具体的には、「ネットワーク計測に基づく適応経路制御技術」、「品質を考慮したシームレスな資源利用・割り当て制御技術」、「多様性・可変性に適応するエンドツーエンド通信(端末間通信)制御技術」の3つで、それぞれに常勤の拠点研究員、特別研究員が従事しています。

---それぞれのテーマについて、具体的にはどのような研究が進められているのでしょうか。

 「ネットワーク計測に基づく適応経路制御技術技術」では、ネットワークの状態や流れているトラフィックの性質を考慮する技術に関する研究を行っています。超高速ネットワークにはあまり細かい経路判断をさせず、その手前のエッジでどの経路を選択するかを考えます。エッジ同士で情報交換をしながら最適な経路を決めていく研究です。

 「品質を考慮したシームレスな資源利用・割り当て制御技術」でいう「資源」とは、主に無線の資源を指します。例えば、無線LANなどでは一つの部屋にいくつもアクセスポイントがありますが、その場合にどのポイントにアクセスするかを決定する技術の研究を行っています。現在の無線LANでは、一番無線が強いアクセスポイントにつながる仕様になっていますが、それだと多数のパソコンが1つのアクセスポイントに集中して回線速度が遅くなる場合があるので、適切かつ自律的に分散する技術が必要になります。これは単一ネットワークにおける資源選択と言えます。さらに、複数の異なる種類のネットワークを同時に使える環境も広まりつつあり、その場合に、1つのアプリケーションが2つのネットワークをうまく使い分ける、あるいは同時に使うことでアプリケーションの性能を維持・向上するための技術の研究を行っています。

 「多様性・可変性に適応するエンドツーエンド通信(端末間通信)制御技術」では、現状は超高速なバックボーンを経由するエンドツーエンド通信を研究しています。今は高速ネットワークを専用回線的に使っていますが、インターネットとして多様なアプリケーション、多様なユーザが共存した時に、他のユーザにも迷惑をかけないで、高速なネットワークを使うためのプロトコルの研究です。

---それぞれの研究成果は、今後どのように実用化されていくと思われますか。

 実用化という意味では、「品質を考慮したシームレスな資源利用・割り当て制御技術」における1つのアプリケーションで2つ以上のネットワークをシームレスに使う手法について、特許申請しているところです。今後家電製品間の通信や、身につけた機器とのやりとり、また外出先でのネットワーク接続等に実用化されることが期待されます。まさにユビキタスです。

 また「ネットワーク計測に基づく適応経路制御技術」の研究成果を使って、ルータベンダーが実用化していくことが期待できます。さらに「多様性・可変性に適応するエンドツーエンド通信制御技術」については、開発したプロトコルが次世代の高速ネットワークにおけるTCPとして認められれば、OSに取り込まれます。世界で8種類以上の高速TCPがありますが、次世代インターネットで使うという意味では、まだ技術的な問題があるというのが現状です。こういった中でこれから独自のプロトコルを作っていく予定でいます。

---ここまで研究内容についてお聞かせいただきましたが、北九州JGN2リサーチセンターの特徴や、アピールしたい点は何でしょうか。

 ここのリサーチセンターに限らないのですが、JGN2では他のリサーチセンターとの間で情報を配信し合うことで、頻繁にコミュニケーションをとっています。

 北九州の特徴としては、JGN2のアクセスポイント自体がこのフロアにあることが挙げられます。またこのフロアには、九州工業大学のネットワークデザインセンター、北九州IT研究開発支援センター、北九州市のヒューマンメディアセンター(九州ヒューマンメディア創造センター)が集約されているので、人的交流が盛んであること、国際会議場が隣にあるので、イベントが開催しやすいことも挙げられます。イベントといえば、ヒューマンメディアセンターでは、九州インターネットプロジェクト(QBP)というプロジェクトが進められており、地元の企業に参加してもらっています。ここでも定期的にシンポジウムを開催しており、尾家先生、江崎先生、下條先生にも参加していただいているので、時々講演してもらっています。

 人的資源の面では、拠点研究員以外にも、企業から特別研究員を3名常駐していただいていますが、ここのリサーチセンターにいると中央の情報が素早く手に入ると評価していただいています。他のリサーチセンターについていえば、大学の中に設置されているところが多いので、企業との連携が難しい面もありそうな気がします。

---その他、北九州JGN2リサーチセンターの代表的な設備として何かありましたら、ご紹介下さい。

シミュレーション用機器 シミュレーション用の計算機群があります。疑似的に高速ネットワークの性能評価ができます。また10Gbpsのネットワーク装置やネットワークの品質を変化させることができるネットワークエミュレータもあります。

---こういった様々な実験設備を利用されて研究が行われているということですが、今後研究を進めていくにあたってJGN2に期待している点があればお聞かせください。

 現在、予算が厳しい中で、研究を推進しております。ネットワーク研究全体にかかる予算がもっと増えるとさらに充実した研究ができると思います。例えば、現在のところ、分散アプリケーション的な研究を実施する環境がありません。実験を行う場合は、全国のリサーチセンターに機器を持ち込んで環境を整備する必要があります。それはなかなか難しいですよね。だから、アプリケーションが動くサーバをリサーチセンター等に設置して、利用者がそれを自由に実験できる環境があれば、アプリケーションの研究者が参加しやすくなりますから、研究が飛躍的にすすむと思います。

 これまではネットワークの研究が先行して、それを使うアプリケーションを後から研究するという流れでしたが、これからはアプリケーション側からネットワークへの仕様の要求があって、ネットワーク、アプリケーションが共に高度化していくことになると思います。そのための支援をJGN2には期待しています。

 

 インタビュー終了後、北九州JGN2リサーチセンターの関係者の皆さんが一同に集まる忘年会に参加させていただきました。そこで皆さんとお話することで、インタビューの中でお話のあった地元企業や大学との連携、及びそれによって築かれた尾家先生、鶴先生を中心とする人的ネットワークの広がりを実感することができました。

 

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