日本の研究開発ネットワークである情報通信研究機構 (NICT) が運営するJGN 東京-香港-シンガポール回線*1 が、日本の学術情報基盤である学術情報ネットワーク (SINET) の2か月間の停止をバックアップすることになりました。APOnetの枠組みに代表される地域連携の重要性が改めて認識されました。
APOnetは、北米、東アジア、東南アジア及びオセアニア地域の12の先端的な研究教育ネットワークのコンソーシアムであり、アジア太平洋オセアニア地域における高速ネットワークサービスの向上に取り組んでいます。
当初の計画では、JGN Tokyo-Hong Kong-Singapore回線が、SINET上の機器を移設する間の2021年12月から2ヶ月間のバックアップを行う予定でした。SINETは、900以上の大学・研究機関に対して、国際回線を通じた国際研究協力を支援するサービスを提供しています。
日本では300万人以上のユーザが利用しており、ネットワーク、ソフトウェア、コンテンツなどの情報関連分野における総合的な研究開発活動を推進する日本で唯一の学術総合研究所である国立情報学研究所 (NII) が運営しています。NICT及びNIIはAPOnetの枠組みのメンバーです。
しかし、事前にいくら計画しても、予期しない不測の事態は常に発生するものです。そのような場面において、バックアップ・パスの多様性とインテリジェントなネットワーク設計が重要な役割を果たします。そして、仲間同士のちょっとした助け合いが局面打開には不可欠でした。
JGNによるバックアップが開始された後、JGN回線では延期できない定期の保守作業が予定されていました。そのためバックアップは、別のAPOnetメンバーであるArterial Research and Educational Network (ARENA-PAC) が運営するグアム経由の回線と、APOnetの複数のメンバーを含むGuam-SGコンソーシアムに移されました(バックアップルート1)。JGN回線の計画作業が早期に完了し、バックアップはJGN回線に戻されました(バックアップルート2)。
その後、JGN回線で追加の保守作業を行う必要が出てきました。その時グアム経由の回線(バックアップルート1)は切断されていたため、APOnetメンバーであるARENA-PACとAARNetが運営するグアム-豪州回線に引き継がれました(バックアップルート3)。JGN回線の2時間の保守作業が完了した後、バックアップ業務はJGN回線に戻されました(バックアップルート2)。
APOnetの枠組みでは、可用性の高い複数のネットワークの接続を支援することに重点が置かれています。複数のネットワークパスを提供することにより、ルーティングの柔軟性とデータ転送の信頼性が向上します。パートナー間及び地域内の継続的なサービスを保証するのは、この設計の多様性とネットワークの機敏性です。 このバックアップ計画と実行は、NICTとAPOnetが、中断がなく妥協のない研究教育ネットワークの接続性、パフォーマンス及び信頼性の約束をどのように実現しているかを示す優れたモデルです。
*1「JGN Tokyo - Hong Kong - Singapore回線」: | JGNは、情報通信分野を専門とする日本で唯一の国立研究開発法人であるNICTが運営しています。JGN東京-香港-シンガポール回線は、NICT、シンガポール先端研究教育ネットワーク (SingAREN)、シンガポール国立スーパーコンピューティングセンター (NSCC)、大学連合コンピューターセンター (JUCC) が調達しています。 |