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JGNインタビューvol.003

    スマートIoT推進フォーラム「テストベッド分科会」分科会長に訊く
   IoT技術実証・社会実証を促進するテストベッドとは?

― テストベッド分科会のテーマとこれからの活動 ―    

第3回JGNインタビュー/スマートIoT推進フォーラム 技術戦略検討部会「テストベッド分科会」分科会長:名古屋大学 未来社会創造機構 教授/河口 信夫(かわぐち のぶお)氏

 ■スマートIoT推進フォーラム 技術戦略検討部会「テストベッド分科会」
  分科会長:名古屋大学 未来社会創造機構 教授/河口 信夫(かわぐち のぶお)氏

第1回JGNインタビューでお約束したとおり、第3回は2016年8月にスタートしたスマートIoT推進フォーラム「テストベッド分科会」の分科会長である河口信夫氏(名古屋大学 教授)を研究室にお訪ねし、分科会のテーマと今後の活動についてお話を伺いしました。もちろん、河口分科会長は以前よりJGNユーザでもいらっしゃいます。
  <インタビューのポイント>
   ●2つのテーマ   ●分科会の活動とコアメンバ会議   ●気軽に試せるテストベッド活用研究会

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  1.   範囲が広いIoT向けテストベッドはアドバンテージの高い切り口を作ることがポイント
     ― その可能性に関する情報はコアメンバ会議で収集、結果をテストベッド分科会で公表して意見交換へ ―

───第1回テストベッド分科会の中、我が国のテストベッドに期待されることという部分で、「ビジネス・社会的にはIoTへの対応は待ったなし」とお話されていらっしゃいました。

河口 分科会長(以下、河口):IoTは一種のバズワード。最近「IoT」とよく言われますが、IoTになったから新しいことができるというものは、実はそれほど多くはないんです。IoTそのものは昔からある技術ですが、それらがやっとうまくコネクトされて役に立つ時代が来たんです。以前もコストをかけてよいのならできることはたくさんありましたが、ただ昔は大量の日常物をネットワークにつなげてデータを取るなどということは、馬鹿らしいほどコストがかかりすぎていたのです。今はそれができる時代になり、そこからデータがたくさん取れて新しい価値が見いだせるというところまで来たのですから、ビジネスの世界で今、そのIoTの価値を無視していいかというと、それはありえないわけですね。ですから、それが「IoTへの対応は待ったなし」という言葉につながるわけなんです。全員にではありませんが、いろいろなレベルのところにIoTのタイミングが来ているので、そのタイミングを逃さず、活用させようということだと思います

───「IoTがバズワード」というのは、流行りでみんなが言っている言葉という意味ですね。

河口:そうです。蜂がブンブン飛ぶときの音のように皆がしゃべっている感じを意味する言葉ですが、こういう流行りの言葉はいつまで続くかわかりません。一時よく聞かれたユビキタスという言葉も、以前ほど聞かれなくなっていますよね。情報通信ができるデバイスならすべてIoTと言えるので、IoTという言葉を便利で使っていますが、「IoTとは何ぞや」と定義しようとしても、誰も一言ではあらわすことはできないと思います。

───本テストベッド分科会には、そのIoTをはじめ、ビッグデータ・AI等に関する「技術実証・社会実証を促進するテストベッドの要件」と「その利活用促進策」を検討するというの2つのテーマがあるとお聞きしています。

河口:利用促進策というのは、今までのWGでもあった既存のテーマですね。これに対して要件定義というのは今回からの新しいテーマ。IoTの範囲というのはとても広く、既に民間でできているものもありますから、国として支援するとしたら「どの規模」「どんな分野」のテストベッドを準備すればみんなが使えるのかを明らかにしようということなんです。

───そのためには、IoTに対応するテストベッドの準備をどのように進めていく予定ですか?

河口:まだそこはクリアではありません。ただ、IoTの範囲を全部網羅することは無理ですから、どこかで切り口を作らざるを得ない。その切り口は、「テストベッドの意義がある程度わかるもの」であること、そして「他でやっていないもの」ということを兼ね備えたものになると考えています。日本がやる価値があり、民間ではやりにくくて、かつやることの効果が高いアドバンテージのある、ROI*1の高いものをやりたいですね。これについてはいろいろな可能性があるので、現在は情報収集の最中です。

───第1回インタビューの際にお聞きした「コアメンバ会議」の参加メンバたちからも、いろいろな情報や意見が集まりますね。

河口:その通りです。産学の皆さんが収集している情報をコアメンバ会議に持ち寄っていただき、そこでディスカッションするのが一番いいと思っています。その上でいいものを選び、テストベッド分科会でご紹介する形になると思います。つまり、コアメンバ会議はテストベッド分科会の推進エンジンの役割を果たすことになると考えています。分科会でもディスカッションを活発にできればいいのですが、参加人数が多いのでなかなか難しいですから。コアメンバ会議が情報収集・ディスカッションして検討する役割で、その結果を公表して意見を集約するオープンな場がテストベッド分科会ということになります。そして、そのテストベッド分科会での意見をもとにまたコアメンバ会議で検討をするという、ぐるぐる循環する下図のような進め方を想定しています。ぜひモチベーションの高い方々に、コアメンバ会議に参加していただきたいです。

【図1-1】コアメンバ会議が推進力となるテストベッド分科会の進め方
【図1-1】コアメンバ会議が推進力となるテストベッド分科会の進め方
(第1回テストベッド分科会資料より)
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───実際に自ら手を挙げていただいた方に加え、事務局からお声をかけた方も「私でよければ」とすぐ快諾するメンバが集まっており、やる気とスピード感があるコアメンバ会議になりそうです。

河口:短い期間でスピード感を持って"パパーン"と進めるということはなかなか簡単ではないでしょうが、ダラダラせず、コアメンバとともに初年度のうちに何か作りたいですし、「こういう方法でいこう」という方針は立てようと思っています。今はただコアメンバ選定中の段階ですから、私の中で考えていることはあるもののまだはっきりとした目標設定まではできないので、まずはコアメンバ会議は情報収集からスタートしたいと思っています。

───河口分科会長が今お考えになっている情報収集とは、どんな方面のものでしょう?

河口:今IoTの世界で一番気になっているのは、標準化団体の動きで、要件定義に影響すると考えています。Industrial Internet Consortium(IIC)など、いくつかの団体が既にありますし、それらが統合し始めているんです。それらをフォローしていないと、我々のテストベッド分科会が民間や世界の動向と外れてしまうのではないかと考えています。これをきちんと理解した上でテストベッドの切り口を検討をしていきたいです。そのためには、それぞれの団体で何が課題になり、どう解決しようとしているのかを知ることが大事です。以下に示した図は1年ほど前に作成したものですが、既に6つの団体があり、2016年中にOpen Interconnect Consortium(OIC)がOpen Connectivity Foundation(OCF)になり、これにAllSeen Allianceが統合します。また参加企業をご覧いただいてわかるように、メディア系・家電系・工業系など分野ごとに団体があるんです。しかも、標準化の仕様はかつてのようなクローズドではなく、仕様策定のボーディングメンバがお金を出し、それ以外のメンバにも結果をオープンにしているんですね。クローズな標準では実際は使われず、広がらないからなんです。また、各団体で作られたソフトもオープンソースや標準ソフトウェアにしています。日本企業でもこれらの標準化団体のメンバがいるので、今の課題やどのレベルのソフトウェアができているのかについてもっと知っている方にコアメンバ会議に来ていただいて、情報を収集した方がよいと思っています。我々のテストベッド分科会の目的は単に日本を援護するだけでは意味がないので、既にあるこれらの団体を側面から支援するとか、どこかの団体と一緒にやるとか、ソフトウェアを使ってみるとか・・・。もしかしたら、これらの団体側に、大規模テストベッドを提供するということもありえるかもしれないですね。

【図1-2】IoT標準化団体の状況<2016年>
【図1-2】IoT標準化団体の状況<2016年>(河口氏作成資料より)
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───スピード感はとても大切ですが、テストベッド分科会として考えるべきことがたくさんありますね。

河口:そうなんです。「エイヤー!」とやる方法もなくはないでしょうが、それでは良いものが生まれないですから、しっかり考えていきたいですね。そのためには、まずはコアメンバ会議の中で情報収集する会をしないと始まらないと思います。

───もう1つのテーマである利用促進策については、どのようにお考えですか?

テストベッド分科会長の河口 信夫氏(名古屋大学・教授)
【図1-3】利活用促進策の検討ポイント
(第1回テストベッド分科会資料より)

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河口:利活用については、既にIoT研究のためのテストベッドが4つあるので、その利活用例をどう集めて使うのかですね。JGNをはじめとするNICT総合テストベッドのユーザはネットワーク系が多いと思いますが、IoTは範囲が広いので、アプリケーション系などデータを活用するような方にもアピールして今までとは異なる利用者も増やしていく必要があると考えています。もちろん、今のユーザの方たちが「もっとこうなったら使えるのに」という問題点を考えていくのも利用促進策の1つの方法でしょうが、ただユーザはある環境が与えられるとその中で完結してしまう傾向があり、機能改善はともかく新しいユーザを取り込むテストベッドのあるべき姿を改めて考えていくのはなかなか難しいところがありますね。
まだ取り込めていないユーザを取り込むことは、本当に難しいです。我々はそのユーザのことがわかっていないですし、そのユーザも我々のテストベッドのことを知らないわけですから。新しいユーザを見つけるには、いろいろな場に出ていって、説明やディスカッションしていくことが必要だと思っています。実はそのとき単なる『テストベッド』というのでは、一般的にも研究者にもわかりにくいし理解されない傾向があるので、何ができるテストベッドなのかをはっきりさせることがポイントではないでしょうか?

───研究者にとっても「テストベッド」がわかりにくいのであれば、アプリケーション関係の方に「テストベッド分科会」「総合テストベッド」をアピールするのはなかなか大変そうですね。

河口:テストベッドだけでなく、「総合テストベッド」は総合運動場という言葉と同じで、何ができるのかもっと不明瞭な感じがします。サッカー場も野球場もあるけれど、テニスコートはないかもしれない。でも例えば・・・、「IoT実験フィールド」なら、IoTに関係することをいろいろ実験的に試せるということがはっきりします。実際に「スマートIoT推進フォーラムの技術戦略検討部会のテストベッド分科会」と説明すると、「IoT関連の分科会なんだなぁ」とはわかりますが、言葉が長く階層が深すぎて説明しづらいですし、相手側も実態を理解できないようなところもありますね。

───「IoT実験フィールド」、確かにサブ的な名称を付けると、利用を考える側にはわかりやすいですね。さらにどんな利用例があるのかをお見せすることもお考えですか?

河口:具体的な利用例、ベストプラクティスを示すのは、我々の重要な仕事です。今はネットワークとサーバだけなら安価に調達できるので、JGNや総合テストベッドならではの機能、例えば「仮想ネットワーク・レイヤがあって広域のネットワークをソフトウェア・デファインドでコントロールできる」とか、サーバ環境についても「自分たちでわかっている分散システムがあってその間をマイグレーションする」など、我々の持つ環境を活用した事例があると、これを使ったらどうかという話になるんですね。
しかし、具体的すぎると、利用する研究が限定されやすいという面も出てくる。このあたりが難しいところですね。

───なるほど、ベストプラクティスを提示することによる利活用が促進するメリットもありつつ、「これに使えばいいんだ!」と利用法が限定されがちだと、利用アイデアが広がりにくいという面もあるわけですね。


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今瀬 真・センター長
第3回インタビューの会場となった
名古屋大学工学部IB電子情報館
の外観


スマートIoT推進フォーラム内の「テストベッド分科会」の位置づけ
スマートIoT推進フォーラム内の
「テストベッド分科会」の位置づけ

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技術戦略検討部会の3つの分科会とそれぞれの活動イメージ
技術戦略検討部会の3つの分科会と
それぞれの活動イメージ

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「テストベッド分科会」のサイト
「テストベッド分科会」のサイト

 <クリックでサイトに移動>


*1:「ROI」
Return On Investmentの略。
投資した資本に対して得られる利益の割合を示す指標で、投資対効果/投資収益率/投資利益率などと訳される。

  • 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
  • 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
    総合テストベッド研究開発推進センター テストベッド連携企画室

    〒184-8795 東京都小金井市貫井北町4-2-1
    TEL:042-327-6024   E-mail:tb-info@ml.nict.go.jp
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