-NICT委託付共同研究の紹介(その1)-
第8回のJGN-XインタビューはJGN-X活用の研究紹介として、JGN2plus時代から特別研究員を参加されていた櫨山先生のNICT委託付共同研究「テストベッドにおける資源管理と運用連携を実現するアーキテクチャの研究」を取り上げます。
大阪の「うめきた超臨場感・超高速ネットワーク実験施設」をお借りして
●研究のテーマ・概要と進捗状況
●研究成果と課題
●今後の目標
などについて、一問一答の形でお話を伺いました。
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───現在、NICT委託付共同研究で研究されているテーマと概要について、教えてください。
櫨山:テーマは「テストベッドにおける資源管理と運用連携を実現するアーキテクチャの研究」です。その課題の一つがテストベッド・フェデレーションで、JGN-Xとその他のStarBED・INTERNET2*1・DeterLab*2など国内外テストベッドと、オペレーションの負荷をかけずにどううまく連携させるかということを研究しています。そして、もう一つの軸となるのが、ネットワークオーケストレーションです。テストベッドやクラウドコンピューティングなど多くのサーバやシステムが重なり合っているものをどのようにうまく運用管理していくかという概念です(参照【図1-1】)。この2つのキーワードをテストベッドの資源管理と運用連携にフォーカスし、NICT委託付共同研究の中でどのように実現していくかを研究しています。
───概要として2つのキーワードをいただきましたが、具体的にはどんなことをなさっているのでしょうか?
櫨山:この3年間の研究の中でアーキテクチャを考えながら、プロトタイプの実装を作りつつ設計してきました。ただ、2つを個別に作るのではなく、テストベッド・フェデレーションをやろうとするとシステム的インターフェースが必要となり、それをやるためにはテストベッドの管理システムでネットワークオーケストレーションができることが必要になるので、NICTのJGN-XとStarBEDという2つのテストベッド連携を人手を掛けず、運用負荷を減らしてうまく実現するためのフレームワークを作っています(参照【図1-2】)。
───進捗状況は?
櫨山:今年、2013年度は2つのテストベッド連携のプロトタイプを作りましたので、2014年度から実際の運用と並行してサブシステム的に試していこうというところまで進んでいます。どんどん高度化・複雑化するテストベッドの中、次期のテストベッドでは運用・管理の中核の基盤になっていくと思いますが、いきなりの実運用は難しいので、慣らし運転をしつつシステムのブラッシュアップをしようという実証実験の1歩手前ですね。実際に運用している事務局や管理者に使っていただき、システムとして運用を行う上での細かい問題点を指摘いただく予定です。
研究としては、このモデルで実際に運用できるかどうかを検証するという形になります。
───テストベッド連携のプロトタイプを設計する上で、どういう点に注力なさったのでしょうか。
櫨山:最初はテストベッド連携の運用フローを細かく洗い出すことから始めました。さらに、現状でシステムとして何がどう管理されているのか、例えば何がいつ利用者に貸し出されてどう管理されているのかを調べた上で、データベース化すべきところ・無駄なので省くべきところ・ユーザ向けインターフェースを用意して入力してもらうところなど区分けを整理し、分析し直しました。
───運用の省力化に注力したということですか?
櫨山:いえ、省力化ではなく、運用の効率化ですね。というのも、障害が起きたときにはマンパワーが絶対に必要で、省くことはできません。ただマンパワーには限りがあるので、本当に重要な部分で活用できるようすることが大切。つまり、ルールが決まっているテンプレートなサービスについては、ユーザのリクエストがあったら即座にシステムで対応できるようにすれば、かなり効率化できるのではないかと考えています。
───運用の効率化のため、システム対応するテンプレートなサービスとはどんなものでしょう。具体的に教えてください。
櫨山:例えば「イベントのために、VLANパス・サービスを東京-大阪間で1週間借りる」というような、よく利用されている定型的なサービスのことです。ただ、JGN-Xは研究用ネットワークテストベッドなので、定型的なサービス利用だけではなく、新しい技術を試したいという場合もあるので、これについてはオペレータに投入してもらうことになりますが、その他の部分で簡単なセットアップでルールが決まっている定型的サービスに関して、サポートするシステムを作ったんです。
このテンプレートな部分を資源としてトータルに管理する設計をコアとして、例えばVLANサービスや新しい技術サービスについてはモジュール化していくという大きなアーキテクチャを設計し、JGN-Xの中にプロトタイプのシステムを準備しています。StarBED側にも同じコンセプトのシステムがあるので、マッチングするための整理を少し手伝った上で、2つのシステム間の連携をしながら、実際の運用や利用の連携ができるかをやってみようというところです。
───2つのテストベッドを連携させるポイントは、何ですか?
櫨山:一般的には事務的手続き、「どのノードをいつ借りているのか」というユーザへの貸出しの利用形態情報が、テストベッド間で伝達でき、かつユーザとも情報伝達できることですね。
現在、JGN-XとStarBEDを連携して使おうとすると、ユーザは別々に申請を出して連結して使いたいと連絡する必要があり、両システムの管理者が各システム内の貸出しをすると同時に、お互いの調整も細かくしなければいけないと思います。しかし、このテストベッド連携のシステムができれば、例えばJGN-XユーザがJGN-X経由でStarBEDのノードを利用したい場合、JGN-X側システムで申請すれば透過的にStarBEDが利用できるという賃借モデルにも対応できます。ユーザも便利になりますし、両方の管理者やオペレータの作業も効率化できることになります。
───テストベッドの運用連携というのは、管理者やオペレータだけでなく、ユーザにとってもメリットが大きいことなんですね。
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第8回インタビューの会場となった
「うめきた超臨場感・超高速ネット
ワーク実験施設」があるビル
*1: INTERNET2とは
米国の学術研究用の超高速ネットワーク。
Internet2 is an exceptional community of US and international leaders in research, academia, industry and government who create and collaborate via innovative technologies.
革新的な技術を利用して創造・共同研究を行っている産学官の米国および国際的な指導者たちのコミュニティ(非営利団体)で、現在、252の米国大学・82の大手企業・68の賛助会員(政府機関含む)・41の教育ネットワーク等が参加しています。
http://www.internet2.edu/
*2: DeterLabとは
ネットワークセキュリティとコン
ピュータセキュリティの研究のためのテストベッド環境。
DeterLab -- the shared facility for scientists engaged in research discovery, development, experimentation, and testing of new cyber-security technology.
サイバーセキュティ技術の研究開発・実験・試験を行う科学者のための共用施設。
現在、200を超える組織がサイバーセキュリティの実験や教育のためDeterLabを使用しています。
http://www.deterlab.net/
インタビュー会場入口の
10面3D立体ビジョンの前で撮影
拡大
【図1-1】
JGN-Xの研究開発体制と
ネットワークオーケストレーション
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【図1-2】
本研究で想定しているテストベッド・
フェデレーションのモデル
<第16回テストベッドネットワーク
推進WG会合資料より>