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JGN-Xインタビューvol.003

【JGN-X研究者インタビュー】『JGN-Xが目指す「ネットワークオーケストレーション」』

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3. ユーザリクエストに従い、必要なとき簡単にVLANをはる仕組み「DCN」
― WEBサービスに加え、APIのインターフェースを用意。アプリケーションと連携しても利用可能です。―

───次に大槻研究員にお伺いします。どんな研究をされていますか?

大槻:主に、End-to-Endでパスを自動的に作るという仕組みを対象として研究しています。その一つが、JGN-Xで展開しているDCN*というサービス。ユーザさんが一時的にVLANを使いたいときにWEBインターフェースからリクエストをすると、その時間だけ使えるようになる技術です。【図3-1、3-2参照】
インフラは通常マニュアルオペレーションなので、安全な半面、柔軟な対応ができないこともありますが、ユーザリクエストに従って安全かつ柔軟な対応をさせるために、プログラムで特定のところにVLANをはって上の階層で使ってもらうことを考えました。

───「DCN」でVLANをはって行う実験や研究には、どういうものがありますか?

大槻:VLANを特定の時間だけでもほしいというのは、大きいファイルを送るとか特定の時間にビデオストリームを流すとか、主にPoint-to-Pointで大容量データを流す際に帯域を確保した上で一定時間だけネットワークを占有したいという要求が、潜在的に多いと思います。イベントでの実験やシンポジウムなどで会場を映像でつなぐときなどに有効ですね。

───確かに一時的に帯域を確保するのが簡単にできると、便利ですね。

大槻:さらにDCNサービスのメリットとして、米国のInternet2とプロトコルをあわせ、コントローラ側のソフトウェアが同じものを使っているので、リクエストさえすればInternet2とすぐにつなげることができます。例えば、NICT大手町とシカゴの間にVLANがほしいとき、通常だと国際NOCが電話やメールでやりとりして、VLANのいくつを使ってというネゴシエーションをした上で、途中のスイッチを一つ一つ設定しなければ使えないのですが、極端に言うとボタン一つ押すだけでそのリンクが使えるようになります。
実際、これを使って、毎年11月に米国で行われるSCというイベントでも実験をやりました。また、東大の中尾先生と一緒にやっている仮想化ノード(VNode)のデモを2012年米国・ユタで行ったときは、ソルトレイクと東大の間にDCNを使ってVLANをはりました。

───国内だけでなく、米国とも必要なときにVLANをはって、デモや実験ができる!

河合:DCNはSDNより随分先行して出ており、パス制御の仕組みをWEBサービス化するという技術です。ネットワーク機器の設定を手で打ち込むのではなく、WEBアプリケーションのようにWEBで簡単に設定できるんです。

大槻:JGN-XのDCNサービスは、WEBサービスだけではなく、API(Application Programming Interface)も用意しており、ユーザさんが作っているアプリやプログラムから直接リクエストすることもできます。【図3-3参照】
たとえば、仮想化ノード(VNode)のシステムでは、スライスマネージャーというのがあり、ユーザさんがこういうスライスがほしいという設定を入力すると、DCNに必要なリンクに対してリクエストが来て、VLANをはることができます。

───そうすると、ユーザ側はわざわざDCNを使う意識がなくても、VLANをはって実験に集中できる。良い意味でのブラックボックス化ですね。

河合:それが仮想化の本質ですね。

大槻:そうです。VLANをはるのに何が必要かを詳しく理解していなくても、必要な人が必要なときに使えるようになると便利になると思っています。

───どういう使い方を想定していらっしゃいますか?

大槻: 安定的に利用するというより、アプリケーションと連携してVLANを確保したり開放したりしたいという方々には是非使っていただきたいです。放送局などのエンドユーザに対してネットワークサービスなどのシステム提供を行うプロバイダさんが、放送局などの要望に応えて、必要なときにDCNから動的にVLANを確保したり開放したりという制御を行うなんてサービスもあるかもしれません。

河合:最近JGN-Xで取り組み始めているのは、DCNとOpenFlowのRISEとの連携です。OpenFlowの場合は制御できる粒度が小さく、基本単位がフローですが、DCNの基本単位はパスですから、粒度が大きいというか粗いのです。これを米国との相互接続を考えるときのアーキテクチャーに活用しようと考えています。例えば「【図2-3】RISEの国際連携」のような場合、日本国内ではRISE、日米間もパスの設定のところでDCN、米国側ではOpenFlowという仕組みで、RISE側から細かい制御を入れると日米間のパスも動的に生成されて、最終的に米国側のOpenFlowネットワークも制御できるというような連携がきちんとできれば理想ですね。まさに、ネットワークオーケストレーションの一つの形になると思うんです。【右の図2-3<再掲>参照】

───ここでもネットワークオーケストレーション。単独利用だけでなく、DCN、RISE、OpenFlowそれぞれの良いところを利用して日米間の相互接続も簡単にできる。これも良い例ですね。

河合:End-to-EndのSDNアートテクチャとして、ユーザさんが直接使うOpenFlowの細かな制御の世界と、DCNの広域での粗い制御というのをきちんと連動させていくということができると、グローバルなSDNができると考えています。

大槻:そういう意味でDCNはエンドユーザ利用だけではなくて、ミドルウェアを作っている人たちの利用がこれから増えていくのではないかという感じがしています。ぜひ、ミドルウェア関連のユーザさんに、DCNもお試しいただきたいですね。

───大槻さん、ありがとうございました。




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大槻主任研究員
DCN*について説明する
大槻主任研究員

 

*DCN:
 (Dynamic Circuit Network)
2点間のVLANパスを動的に作成/削除することができるネットワーク制御技術で、利用者はコントローラから、これらを制御することができます。


DCNアーキテクチャ概念図
【図3-1】
DCNアーキテクチャ概念図


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DCNコントロールプレーンの動き
【図3-2】
End-to-EndでVLANをはるときの
DCNコントロールプレーンの動き


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JGN-XのDCNサービス
【図3-3】
JGN-XのDCNサービス


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RISEの国際連携
【図2-3】
RISEの国際連携


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