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JGN-Xインタビューvol.007

JGN-X座談会】地域協議会リーダー&メンバーに聞く『各地域での活動状況とJGN-Xへの期待』

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2. 地域での活動を活性化する秘訣は、ホットなテーマ選びがポイント
― 地域でのJGN-X利用促進は、新世代ネットワーク自体の研究ではなく利活用にシフトした方がわかりやすい! ―

───人的交流が進み、全国的に利用促進が進んだJGN2時代のお話をたくさん伺いました。では、JGN-Xになってからの地域における活動テーマと現状について、伺わせてください。

相原:中国地域では、中国総合通信局が中心となって「中国超高速ネットワーク連絡協議会」を運営しています。期間が3~5年しかないJGNプロジェクトの協議会というより、ずっと続くマクロな視点をもつ協議会とするため、名称の頭にJGNとかJGN2というものを入れませんでした。
この協議会活動の中で、JGNのプロジェクトが変わるごとに地方の研究者の関わり方が少しずつ変わってくることを実感しており、年2回の協議会活動を活発化するためにテーマの選択にいつも頭を悩ませています。というのも、本来は地方でもネットワークを利活用することで次世代ネットワークのニーズを生み出すという、相乗効果を考えたテーマに真っ向から取り組みたいのですが、そうすると地方では参加してくれる方が限られてしまうんです。また、地方ではユニークな使い方・利活用に先進的なことが生まれることもありますが、JGN-Xのように難しそうな感じに見えるネットワークを使うことには二の足を踏みがち。そこを上手くつなぐ役割を果たすのが地域協議会だと考えていますが、マッチングがなかなか難しい。

───地方企業だけなく、大学の研究者にも、JGN-Xは難しく感じられがちですか?

相原:説明をしても「うーん」で終わってしまうことが多いので、「敷居が高い」という感じですね。また興味を持っても、地方企業は今、体力的に余裕がないので、JGN-Xを使ってもらえないのが残念です。またネットワーク以外の研究をしている大学の先生とかに勧めたいのですが、今は必ずしもうまくいっていないと感じています。

福本:広島を中心とする中国地域で敷居が高いと言っているぐらいですから、四国の「ICT研究交流フォーラム」に至っては、もっと現状は厳しい。JGN2plusまでは「全国や世界までつながるネットワークが使える」ということで分かりやすく、民間の方も使いやすかったと思います。しかしJGN-Xになって「新世代ネットワーク」が前面に出てきたので、「ネットワークの研究をやらなければいけないんだ」という意識が大きく、より敷居が高くなったと思っています。
JGN-Xも3年目になり、「新世代とはいいつつ、新世代ネットワークの技術を使って、アプリや応用でもいい」という方向が見えて分かりやすくなった分、「ICT研究交流フォーラム」の中でも興味が湧いてきたというのが、現状です。

───分かりやすくないと、自ら進んで自分の研究とマッチングしようと思えないということでしょうか?

福本:新世代ネットワークのニーズが分かりにくかったですし、あるとしても「そもそも新世代って何?」という部分もありましたね。特に、「自分はネットワークの研究者じゃない」という意識がやはり強かったと思います。
どちらかと言えば、企業より大学の研究者の方がJGN-Xにとっつきやすいと思うんですが、ネットワークとしてのつなぎやすさでは学術情報ネットワークのSINETと比較されてしまうんですね。ただ、民間企業の方はSINETを使えませんから、共同で研究するときはJGN-Xの方がいいのですが・・・。

───四国地域で、JGN-Xの利活用を進めるには・・・

福本:四国、特に高知では防災の話がホットですから、そこでJGN-X活用の話が進んでいます。いろいろな重要なデータ、高知県内の病院のデータや四国内の大学データをバックアップしようというプロジェクトが進んでいます。全国ネットですから、四国から離れた場所に高速で格納できる。しかも生活用ネットワークではなく研究用だからこそ利用が限定されているので、被災時にも確度が高く利用可能だと思います。
JGN-X上のストレージを、手元のサーバ環境のようにJGN-Xの中に格納したり分散して格納したりできるのも、アピールポイントです。

───このような地域ごとの利活用情報を、大学の先生・地方の民間企業の方にお知らせできれば、JGN2時代のように活性化につながりますか?

福本:そうですね、新世代ネットワークを全面に出すより、「ネットワークとストレージを使って仮想化環境で色々なことができますよ」とアピールしていったら、いろいろな使い方が出てきました。
例えばうちの大学の例ですが、「救荒植物*1」を研究している先生がいるんです。今まではJGN-Xとは全く関わりがなかったのですが、救荒植物の写真を撮影してデータベースにアップしたり、既にアップされている救荒植物の写真をもとに投稿された植物の画像を検索し、位置情報と合わせることで全国的なマップができるという研究を行っています(右図参照:「Lupines(ルピナス)」)。これがJGN-X上にあれば、どこからでも写真をアップしデータベース化できます。そして何より大事なのは、実際に非常時に利用できるということ。JGN-X上にあるから、被災したいざというときにどこにいてもスマホからアクセスでき、どこに行けば食べられる植物があるということが分かるし、食べ方も調べられますよね。

───広岡さん、九州地区ではJGN-Xになってからいかがでしたか?

広岡:JGNとJGN2時代の地域におけるネットワーク環境は比較的poorでしたし、アプリ開発のニーズも高かったので、研究開発プロジェクトのネタも山ほどあったと思いますが、JGN2plusとJGN-Xではそれらが出尽くした感じがありました。また国としても、ネットワーク分野の研究開発をより深めていこうということで、新世代ネットワーク研究へ注力していったものと思っています。このとき地域には、この分野を専門としていた研究者層がそれほど厚くなかったのでは、と思う次第です。
ただ、その後、状況もいろいろと変わってきた現在において、JGN-Xだからこそできると思われるもので一番大きいのは、ビッグデータ。大学だけでなく、企業も自治体も含めて「これを上手くやっていかなくてはいけない」という気運が出てきています。ビッグデータなら、確かにOpenFlowやSDNなどの新世代ネットワーク技術と親和性が高い。だから、「今からビッグデータの時代が来ます → 皆さんどうしますか? → 研究するべき課題は何ですか? → その時にJGN-Xってこう使えるんじゃないですか?」というロジックを働かせることができれば、たぶん地方でもまだまだJGN-Xを使う頭出しができるのではないかと考えています。

───「ビッグデータとSDNの親和性から、JGN-Xの利活用へ」ですね。

広岡:九州地区でもビッグデータ関連の研究会はいくつか立ち上がっていますが、ほとんどデータ分析に偏っています。
KIAIとしては、使う側の立場に立って、「実際ビッグデータを使うためのエンジンとして、新世代ネットワークはこう使える」という情報をNICT側からも教えていただきつつ、利活用の新しい芽を見つけて行きたいと思っています。
早速、2013年12月の「九州ICT広域連携シンポジウム2013」に、このテーマで住友室長にパネラーで来ていただきます。

───ビッグデータというと難しそうですが、どう使うかが重要ですね。多くが興味を持つテーマで、人的交流の中でJGN2時代のように地域の皆様と協力して伝えられれば、JGN-Xの利活用もブレークしやすいかも・・・。

相原:でも、新世代ネットワークというのは、僕たちの次の世代の人がやるっていうのが正しいような気がするんですが・・・。

一同:(笑い)

相原:先ほどまでのお話ですと、JGN-Xのストレージを上手く使わないと新世代ネットワークの研究ができないという理屈もありそうですが・・・。JGN-Xはストレージも持っており、単なるネットワークから既に逸脱し、ネットワークレイヤからアプリケーションレイヤまでを包括する新しい概念に変わってきたと考えた方がよいと思います。そうなると、JGN-Xの「N」はネットワークから来ていると思いますので、このネーミング自体も見直しの時期に来ているかもしれません。JGN-Xの次のプロジェクトでは、ネットワークという言葉を使わないことを希望します(笑)。
JGN-Xは全国を結ぶネットワークであること自体は変わりませんが、その上でやることは必ずしもネットワーク技術の研究開発だけでなく、ネットワークを利活用するための総合的な技術開発や応用に広げていくべきだと思います。ネットワーク自体に固執しすぎると、ストレージもプライベートクラウドもおまけの意味合いになり、「JGN-Xは全国を結ぶネットワークで、ストレージもついているので、もれなく使えますよ」みたいに曖昧な説明になりがち。これでは時代の趨勢に追いつけないと思いますし、「インターネットがあるし、別にネットワークはJGN-Xでなくてもいいよ」という話に落ち込むわけです。もう少し利用目的を広げるイメージが必要です。

住友:実は、NICTも既存のネットワークの世界から新たな局面を迎えていると考えています。坂内・NICT理事長も「情報通信分野はサイバー世界と実世界の融合が主眼となる、第3のパラダイム*2に移りつつある。NICTはこの第3のパラダイムに照準を当てて研究開発を進めていく方針」と言っています。つまり『サイバーフィジカル』ですね。ネットワークからはみ出して、実空間のセンサー情報とクラウド等の仮想空間の両方を使って、最終的にはビッグデータでどう吐き出していくかというところが、今後求められています。
このとき、ビッグデータからの大量アウトプットをネットワーク的にどう支えるかが、JGN-Xネットワークに与えられた役回り。今、SDNなどのネットワークで、そのための構成をどうしていくかに取り組んでいるところです。

───JGN-X自体も変わりつつあり、サイバーフィジカルな世界に向けてのベースの準備をしているということ。ネットワークだけの研究でなく、利活用も含め、いろいろな研究や応用に利用できるということですね。

住友:そうです。

福本:NICTの新世代ネットワークも、サイバーフィジカルという「実世界とサイバー世界の境を意識しない世界」が狙いだったと思います。しかし当初はその世界を作るためにネットワーク自体の研究からスタートしたので、ネットワークの研究者以外にはわかりにくかった。はじめから「ネットワークの研究じゃなくてもOK」と言ってくれると、すごくわかりやすかったと思うんです。利用側からすれば、ネットワークがどう進歩するかは重要ではなく、使いやすければいいんですよね。



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寺西・主任研究員
住友室長と相原先生
(左から)



寺西・主任研究員
福本先生と広岡さん
(左から)



寺西・主任研究員
豊かな自然の
広島大学・東広島キャンパス












































*1「救荒植物」とは:
「きゅうこうしょくぶつ」と読む。山野に自生する植物で、飢饉(ききん)の際に食糧になるもの。ノビル・ナズナ・オオバコなど。備荒植物とも言う。 


植物のデータベース「Lupines(ルピナス)」ページ
植物のデータベース
「Lupines(ルピナス)」ページ


※図をクリックしてご確認ください


























































*2「情報通信分野の3つのパラダイム」における各フェーズが主眼とするものとは:
第1/いかにコンピュータや通信システム作るか
第2/いかにネット上にサイバー世界を作って活用するか
第3/サイバー世界と実世界の融合 

  • 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
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