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JGN-Xインタビューvol.014

JGN-Xユーザ座談会 in 高知
  『医療とICTの連携で、地域の課題を解決!
     高知の地域間連携医療情報ネットワーク』

― 南海トラフ大地震に備えた医療情報保全および地域医療連携と「JGN-X」 ―

第14回JGN-Xインタビュー/JGN-Xユーザ座談会 in 高知 高知工科大学・福本教授(右側)と高知医療センター・澤田先生(中央)・北村さん(左側)
■高知医療センター 地域医療科  科長/澤田 努氏(中央)
■高知医療センター 医療情報センター 情報システム室  医療情報技師/北村 和之氏(左側)
■高知工科大学 情報学群  教授/福本 昌弘(右側)

第14回のJGN-Xインタビューは「高知医療センター」をお訪ねし、南海トラフ大地震に備え、JGNを積極的にご活用いただいているJGN-Xユーザの皆さまに座談会形式でお話を伺いました。
また座談会の前に、高知県及び高知市における医療の中核である「高知医療センター」の施設を見学させていただきました。
  (見学内容については、フォトライブラリにまとめております)



|1| |2| |3. 高知医療センター|

1. 高知県の地域医療にICTを活用するきっかけは「へき地医療の充実」のため!
― 南海トラフ大地震への危機意識が、県全体の6~7割をカバーする医療情報バックアップや連携を推進 ―

───高知ではかなり以前から地域医療にICTを活用していらっしゃいますが、ICT活用を始めたきっかけと現状について、まずお聞かせください。

澤田:私の仕事はへき地医療支援業務が中心で、高知医療センターの前身である高知県立中央病院時代からずっと携わってきています。へき地はそもそも時間と距離のハンデキャップの大きなところですから、それを克服して医療を進めていくのに、ICTを活用し、後方の高次医療機関に画像や診療情報を電子データとして送るということが始まりですね。
ただこれを始めようとした頃はインターネットがそれほど普及しておらず、前の橋本知事のときに大きなお金をかけて高知県内の全市町村役場と小中学校に光ファイバーを敷設しようとしていたので、町役場や学校の近くにあるへき地の診療所にもこの光ファイバーを分けてくれないかとお願いするところが端緒でした。「これからのへき地医療には、若い医師の方々の力が必要。そのためにはインターネットは絶対に必須ですし、相談や患者さんの紹介などで先生方と連携するにも重要」と、知事への陳情に加えて高知県新情報ハイウェイ*1を開発・運営している情報政策課と調整をしました。当時、とても難しい話でしたが、へき地医療などの高知の地域医療の難しさ・困難さや若手医師確保の方策について知事がかなり模索されていた時期でもあり、県の協力をいただき、高知県新情報ハイウェイをVPNで切り分け、「へき地医療に特化したネットワーク」が出来上がったわけです。このネットワークを使って、へき地診療所で撮影したレントゲンやエコー写真を高次医療機関に送っているんです。

───この高知医療センターに画像が送られ、実際に診断してもらっているわけですね。

澤田:そのとおりです。へき地にいるお年寄りがわざわざ1時間半かけて高知市内まで来ていただかなくても、「この患者さんだったら、抗生物質のこれを使いましょう」と診断がつき、治療が完結する場合も多いんですね。また入院してもらうことになっても、ここに来るときには入院の準備をして行けるので、無駄な体力を使わなくてすむため、患者さんも楽になりますよね。特に中山間・離島などのへき地に暮らすお年寄りたちの場合は、高知医療センターに来るには、乗りなれない車に乗るやら、お化粧したりよそ行きの服を着たりと身なりに気を使うやらと大騒動になり、緊張や疲れを伴うので、普段の状態の診断ができづらいんです。へき地診療所から画像伝送ができれば、ふらっと診療所に行っていつもの先生に診てもらう「普段着の診療」の中で、高知医療センターの脳外科や心臓血管外科専門医とかにコンサルテーションして、診断がついたり医療方針が決まるので、メリットが大きいんです。

───患者さんにとって掛かりつけの先生に診ていただけるいうのは、安心ですね。こういうへき地医療の現状に対して、いつ頃からネットワークがつながったんですか?

澤田:はい、それを克服すべく、平成7年ぐらいから当時「64」と言われていたISDNで離島の「沖の島診療所」と「大月病院」が結ばれたのが、高知県で一番最初でした。離島ですから海底にラインを引いたんです。普通ICTというと、都市部から広がるという感じがしますが、高知のへき地医療の場合は、一番端っこの部分から始まっているんですね。

北村:高知県は東西に長い地形で300kmぐらいあります。病院は中心部の高知市内に集中していて、医療従事者も中央医療圏に集中していて、へき地の方が出てこられるのはとても時間が掛かり、大変なんです。10年ほど前は、東西に延びる高速道路の整備とかも全然されていませんでしたし・・・。今も一番端の西の端・宿毛市からは、高知市内まで車で2時間半かかるんです。

澤田:先ほどお話しした離島の「沖の島」からは、本土の宿毛市に行くまでには1時間半ですから、高知市には半日というか1日がかりになってしまいますね。実は画像診断だけでなく、台風などで医師が島に渡れなかった時にも、この場所から遠隔診療ができるんです。

───遠隔診療をするときは、どのようにするんですか?

澤田:患者さんはカメラと画面の前にいて、看護師さんが設定して映像をつなげてくれるので、私としゃべるんです。天候や災害で医師がへき地診療所に行けないときや医師が病気になったときには、映像を通して私たちが指示をすれば、今は看護師さんが処方とか注射とかできます。そういう非常時には、遠隔医療ができるように届け出を出しています。これに触診や聴診ができれば、完璧に遠隔診療ができるんですけど・・・。

───なるほど、高知県のへき地医療を充実させるためにICTを利用されたわけですね。

【写真1-1】「へき地医療情報ネットワーク」活用の4つのイメ―ジ
【写真1-1】「へき地医療情報ネットワーク」活用の4つのイメ―ジ
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澤田:はい。へき地医療情報ネットワークに参加しているのは、へき地診療所が10か所、それを支援するへき地医療拠点病院が8か所です。それに加えて、高知県が5年ごとに出している医療計画の中に脳卒中や心筋梗塞の連携パスがあり、脳卒中や心筋梗塞をおこされた患者さんを症状によって、一次医療機関は田舎のここ、二次医療機関は地方のここ、さらに重篤な場合は広域搬送をして高知市内の三次医療機関が対応するという位置づけが決まっています。この時にも画像伝送で情報をいち早く送った方がいいので、急性期の病院もICTをやりたいのですが、インターネット上での個人情報のやり取りはセキュリティ上危ないということで、すぐに乗ってくれなかったんですよ。でも私たちのへき地医療情報ネットワークは診療所と拠点病院をつなぐクローズドネットワークで、医療情報のやり取りをしていても一回も漏えいがないということが分かり、安心されて、今では急性期病院が12か所も増えて、合計30拠点になりました。このネットワークでは画像伝送だけでなく、多地点の遠隔WEB会議、救急車の動画伝送を行っています。WEB会議ではドクターヘリで救急搬送されるような症例を毎月検討しますが、最大32画面まで同時ログインできるので、かつては出張届を出してわざわざ仕事を休んで検討会議に参加していたのが、地元の診療所まで行ったら、症例検討会に参加できるという利点があります。また救急車の動画伝送というのは、天井に設置したWEBカメラで患者さんの表情・声・顔色などをリアルタイムにこちらのセンターに伝送するんです。状況も刻々と分かりますし、救急車内のモニターも映るので、バイタルも見えます。さらに県警もこのへき地医療情報ネットワークに入っているので、高知独自で開発したスマートフォンで15秒間の動画を最初に事故現場へ到着する県警のお巡りさんが撮って、県警本部を通じて救命救急センターに送るということもやっていますが、日本でもここだけですね。これによって、命に係わるような高エネルギー外傷*2かどうかを判断し、ドクターヘリで行くべきか救急車でよいかを指示できます。

───福本先生は、このへき地医療情報ネットワークに後から関わられるようになったんですか?

澤田:実は、へき地診療所が簡単に電子カルテを導入できるよう、WEB型電子カルテを入れ、そのサーバが医療センターの中にあり、ネットワークを介して利用しているんですね。この話を福本先生がどなたかからお聞きになったんですよね、随分昔の話ですが・・・。

福本:あれは情報政策課の担当の方からですね。もともとは、JGN2のイベントがきっかけです。

北村:全然知りませんでした。

福本:当時JGN2では全国各地でイベントをやっており、高知の番がまわってきたので、安い費用でJGN2を使える会場探しで相談したところ、できたばかりの高知医療センター内の「くろしおホール」を紹介していただいたんです。そのイベントのテーマは「ICTと防災」などを考えていましたが、せっかくこの場所を使わせていただくのですから、ICT-防災-医療というつながりで、澤田先生をご紹介いただき、講演をお願いしたのが最初でした。

───今、防災と医療という話が出ましたが、澤田先生のお話ではまだ防災ということばは全然出てこなかったと思いますが・・・。

【写真1-2】プレハブ内の機材と8K映像の撮影風景(2014年2月)
【写真1-2】WINDS衛星ライブ伝送イメージ <NICTの中継車両
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澤田:初めは、防災という考えは全然なかったですね。2011年の2月、まさに東日本大震災の1か月前に、へき地の遠隔画像伝送の衛星版をやりたくて、たまたま県の医療政策課長とうちの救命救急センター長を筑波のJAXAに連れて行ったところ、小笠原諸島の離島を「きずな」というWINS衛星通信*3でつなぎ、ハイビジョン伝送をもうやっているわけですよ。私はへき地医療の視点しかなかったんですけれど、救命救急センター長が「これは災害で使える」と言われてたんです。さらに医療政策課長が災害・へき地・医療救急と全部担当していまして・・・。その3人が集まって高知に帰ったら、なんと偶発的に3月11日に起こったんですよ。
その医療政策課長は医系技官出身の方だったので、厚労省ルートを介して、「今、衛星通信の機械があるので、災害で電源がなくなったところでも自衛隊の電源車を持って行き、その上に地球局という衛星を立てたら、WiFi基地ができるしWEB会議もできる」と、DMATのリーダー格の本部に直接連絡をした結果、大船渡・釜石市・盛岡の3か所に設置し、ハイビジョンの衛星通信とか、WiFiエリアを作ってインターネットでの避難者や不明者検索だとかに実際に活用されて、うまくいったんです。これにより、災害時の衛星通信活用を、総務省や厚生労働省も本当にしっかり理解しましたし、今では日本医師会も認知して、都道府県でやる災害訓練には必ず入れています。特に高知の内閣府主催の9.1防災訓練では、今の尾崎知事も正式に県として提携をして、災害時にはその地球局を持ち合って衛星通信をやりましょうという話になっています。要するに3.11以来、日本全体が災害に対する危機管理が高まり、へき地医療が、ひょんなところで災害とつながったんですね。さらに、岩手県や宮城県の海岸べりでは、電子カルテや戸籍謄本など個人情報の根源と言われるサーバまでも一切流されて水浸しになってしまい、復旧できないものがたくさんありましたが、南海トラフ大地震を考えると高知でも同じことが想定されるわけです。私は思ってもみなかったんですが、尾崎知事から災害・救急・へき地などを所管する医療政策課の課長補佐に対して、電子カルテの県外バックアップの指示が出たわけです。ただ、高知県で実際にバックアップができたのは、北村くんが中心となっている高知医療センターだけで、他の病院のバックアップは取り残されていたんです。「何かいい方法はないか?」とその課長補佐から話があったので、「高知ではへき地医療情報ネットワークがあり、既に電子カルテをサーバに集めている。あとは、それを県外へどうもっていくかを考えれば・・・」ということで、JGN2時代から存じあげている福本先生に相談したんです。

───つまり、県外のサーバに電子カルテをバックアップするのに、JGN-Xを思い出していただいたわけですね。

澤田:「使ってみてはどうか」と私は思っただけで、実際はできるかどうかは分からなかったので、福本先生を通じて、NICTさんにアプローチしていただきました。申請を含め、いくつかの難関をクリアしていただいて、それで今に至っているというわけです。電子カルテは個人情報の塊ですので、簡単な話ではありません。私たちとしても個人情報の漏えいだとかデータ扱いとか非常に苦心し、その辺は北村くんが個人情報の取り扱いや電子カルテを病院外で保全するために必要ないろんな事項とかを調査してくれました。

───個人情報をバックアップするときに、どういうことに注意されたわけですか?

【図1-1】診療録等の外部保存を行う際の基準となった3省の4ガイドライン
【図1-1】診療録等の外部保存を行う際の基準となった3省の4ガイドライン
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北村:ファシリティなどのインフラ関係とかについては、一定の順守しなければならないガイドラインが定められているんです。医療機関に関しては厚労省のガイドライン、民間事業者のいわゆるデータセンターに関しては経済産業省が医療情報を預かるためのガイドライン、さらに厚労省と経産省を結ぶ総務省のガイドラインなど、3省4ガイドラインです。
当センターでは、2011年に東日本大震災が起こった当時、電子カルテシステムを構築・利用していましたが、震災で電子カルテのサーバが流されて復旧できなくなるなんて思ってもいなかったので、要件定義として外部バックアップを定めていなかったんです。けれども、澤田先生からDMATとして現地に行かれたお話を聞いて、当センターとしてもやっぱり実施することが急務だということになり、特別予算を使って先行的に東日本にバックアップを行うシステムを導入しました。そのタイミングで3省4ガイドラインを知ることができ、県内の13機関が参加している「高知県医療情報通信技術連絡協議会*4」として電子カルテのバックアップをするにあたっても、要件や仕様に盛り込んでいきました。

───県内の電子カルテは、高知医療センターのサーバとは別のところにバックアップしてるんですか?

北村:言いたいんですが、守秘義務があって言えない部分なんです。アバウトには東日本のどこかですね。

澤田:そうです。東海・東南海・南海の3連動の地震が想定されるので、大阪辺りでのバックアップに満足していてはだめで、せめて東海地方は超えておかないと危険です。この遠隔地へのバックアップはJGN-Xがなければできなかったので、ものすごく助かっています。

【図1-2】JGN-Xを利用した医療情報バックアップシステムの構成イメージ
【図1-2】JGN-Xを利用した医療情報バックアップシステムの構成イメージ
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───ご活用いただき、ありがとうございます。ところでバックアップした電子カルテは、復旧のために必要だと思いますが、緊急時にもそのまま使えるんですか?

澤田:ええ、電子カルテのシステムは病院ごと・ベンダーごとに異なっていますからね。でも、まずSS-MIX*5という情報交換を可能にする仕組みがあり、NECであろうが富士通であろうが、IBMであろうが全部が見ることができるようになっています。ただそういうものは、光ファイバーやちゃんとした電源がないと、見ることは難しい。私は、被災直後に見ることができる情報っていうのはテキスト情報ぐらいだと思っています。というのも、被災地ですぐに復旧するネットワークは、docomo、SoftBank、auなど携帯電話のアンテナ車が来て、そこでできるぐらいの通信ですから。

───つまり、災害直後は携帯電話やスマホで見られる内容に絞り込んで、検索ができればいいという感じでしょうか?

澤田:その状態でSS-MIXでやると、それだけでかなり回線を専有してしまうので、他の大切な情報通信がまったく遮断されてしまうということになりかねません。やはり電源やハードが復旧しないと、電子カルテどころの話じゃないということです。しかも、災害救助法に基づき、災害が起こって1~2週間ぐらいはすべてボランティア医療と決まっているんです。当然保険請求なんかはできませんので、患者さんの負担はないですし、電子カルテは必要ありません。だから高知の考え方は、電子カルテをまるごとバックアップしておき、南海トラフ大地震が起こって2週間ぐらい後に電気やハードが復旧した段階で、電子カルテを戻して、地震発生1分前のカルテでスタートしようというということなんです。では、地震発生~2週間のボランティア医療のときに何が患者さんに必要かというと、私がDMATで東日本大震災の支援に行って感じたのは、患者さんの病気のプロフィールをしっかり明示する薬の処方情報だということです。例えば糖尿病だと言ってもインスリンを使っている糖尿病の人・薬だけ飲んでいる人・食事療法だけの人がいるので、病名だけ見ても分からないんですが、薬を見るとその人がどれだけ病状が悪いのかがよく分かるんです。通常、診断名だとか過去の病歴・画像データは急性期の72時間が勝負と言われていますが、災害時という超急性期においてはそれらを入手することが困難な環境となりますから。それで福本先生と相談しているのは、そのためのテキストデータには何が必要なのかという話なんですよ。今私たちがバックアップしている各病院の電子カルテのデータから名寄せすれば、薬情報過去3ヶ月分をiPad画面1ページ分ぐらいにすぐ表示できます。でも、この技術的な問題より難しいのは個人情報保護の問題。患者さんの同意なしに寄せ集めるということは法律で規制されているんです。例えば、県のモデル事業とか医療特区とかそういうことが許されれば、知事のお名前でお願いして、これを初の災害時の情報共有として高知県でやりたい・・・。もしくは災害の危機管理に認めてもらえるような法律改正を今後進めていただく必要があります。
そのためには、他の患者さんの情報と混同されないように正しく名寄せすることも重要で、マイナンバー制度などもその後押しになるのではないかと思っています。

───災害発生から一定期間だけはという条件付きで、同意がなくても個人情報を名寄せして薬の処方情報だけは使っていいとなれば、被災者は助かりますね。

澤田:そうなんです。その期間を災害救助法適用の時期だけにするとか、そういうことがこれから議論されてくるはずです。東日本大震災がきっかけになって、いろいろ次の震災への対応に活かされてきつつありますが、まだ法制化されていません。でも、それが法制化されたら、30年以内の南海トラフ大地震発生が想定されている高知は、既に平成7年から積み上げてきたネットワーク・電子カルテ・遠隔医療などの環境がありますから、すぐにそれができるんですよ。

───平成7年からですから、20年間の積み上げですか? そしてこのセンターができて10年ですね。

澤田:まさに20年です。当初ISDNの64Kで始めましたが、平成17年にこのセンターができたときに光ファイバーになりました。そのときに、福本先生との出会いがありましたが、これがなければ、高知県内だけでのバックアップで終わっていて、ここまでの応用がなかったのはもう間違いないです。そして北村くんのように実務をしっかりやってくれるシステムの専門家がいてくれたことも重要でした。

北村:高知医療センターには、電子カルテだけではなく、部門ごとのシステムを含めて約50以上のシステムがあります。保守運用は他のメンバーにお願いしていますが、毎日1千人ぐらいの職員が働いているので、それぞれ職種に応じた専門の部門システムの仕組みを基本設計したり部門間のインタフェース連携も設計したりしています。

澤田:それにプラスして、地域の開業医さんたちが紹介した患者さんについて、当センターのカルテを見られる「くじらネット*6」というシステムの運営管理、さらに地域医療連携の事務局もやってもらっています。北村くんがあと3人ぐらい欲しいんです(笑)。「くじらネット」のような仕組みは他の大きな病院もやりたいのだけれど、そこには北村くんのような人材はそうそういないし、別の仕組みを作るのも大変でなかなか進まないんです。ですから「一緒にやりましょう」というのを動機づけに進めていこうと思っています。

北村:澤田先生は、県の職員との兼務なんですよ。

澤田:私は医療センターの医師でありながら、高知県庁の医師として県の医療政策を担って、そのうちのへき地医療をやってきたんです。部署内で救急や災害の話もするので、私のところに課長補佐からさきほどのような相談があったり、いろいろな人と出会うチャンスがあったり。そこをつないでいく役割もあるのかもしれません。

───先生は医療情報関係システムに加え、人的ネットワークの中心でもありますね。

澤田:ありがとうござます。

福本:まさに、そのとおりですね。

北村:いろんなことをご一緒しました。無医地区の電子カルテもそうですね、あれも全国初でしたね。

───えっ、無医地区にどうやって電子カルテを作るんですか?

澤田:そう思いますでしょう? 携帯電話すら届かない所に電子カルテを導入するということをやったんですよ。ノートパソコンを持って行き、電子カルテを向こうで書き換えて、持ち帰ってそれをこちらのセンターに有線でつないで、時系列的に落とすんですね。まあ理屈としては単純なんですけど・・・。次に無医地区に行く前に北村くんがそれをノートパソコンにダウンロードして、最新の状態にして持っていくという仕組みです。無医地区に携帯電話のLTEとかの環境があれば、リアルタイムでできるので、あまり珍しい話じゃないんですが、まったくその携帯電話がつながらない電波の不感地域で電子カルテの導入ができるっていうことが非常に大事なんですよ。また、オフラインでこれができるということは、災害医療でも活用できるということにつながりますね。

北村:災害医療に加えて、在宅医療とかにも活用できますし、ドクターヘリにも乗せられます。

澤田:今、携帯とか必ず無線とかでつながってないと電子カルテはできないというのが当たり前の概念なんですが、それを取っ払ったわけですね。二人とも新しもの好きなので、いろいろやってます(笑)。

───それは、とても面白いです。南海トラフ大地震で危険なのは、高知だけじゃないですが、高知県でうまくいっているのは、澤田先生・福本先生・北村さんたちがいらしたからですね。

澤田:それもあるでしょう(笑)し、やはり高知県の人口規模が小さいことも大きいです。たかだか73万人で、世田谷区よりも少ないんです。

北村:これを愛知県でやろうとしたら、難しいでしょうね。

澤田:まず無理だと思います。他の県でやろうとすると、災害対策の拠点となる病院も多過ぎるし人口も多すぎて、収拾がつかないんです。

───県全体の取組みですが、それをモデル地区的な規模で試せるし、構築できるわけですか・・・。

澤田:さらに高知県の場合は、南海トラフ大地震対策で、知事が前のめりなので、余計にやりやすいこともありました。たぶん平時の地域医療連携はできなかったですね。


|1| |2| |3. 高知医療センター|



2015年2月の「さっぽろ雪まつり」8K非圧縮映像 100Gbps回線上、IPマルチキャスト伝送実験
今回の座談会会場となった
「高知医療センター」


地域間連携医療情報ネットワークの中心/高知医療センターの澤田科長
地域医療連携ネットワークの
中心/高知医療センターの澤田科長


*1「高知県新情報ハイウェイ」:県、市町村、公立学校等の公的機関が利用することを主な目的とした、全県的な情報通信ネットワーク。 高知県民の生活向上、県内の産業の活性化に向けて、その一部を民間企業にも無料で開放している。

高知県情報ハイウェイ<2013.9>
高知県情報ハイウェイ<2013.9>
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高知医療センター ICT部門のかなめ/医療情報技師・北村氏
高知医療センター ICT部門のかなめ/
医療情報技師・北村氏


高知医療センターとJGNを結びつけた高知工科大学の福本教授
高知医療センターとJGNを結びつけた
高知工科大学の福本教授



*2「高エネルギー外傷」:
体に大きな力(高いエネルギー)が加わって起こった外傷のこと。スピードの速い交通事故、落下事故などが該当する。身体内部の広い範囲で組織が破壊されている恐れがある。

高知医療センター内のホール「くろしお」入口
高知医療センター内のホール「くろしお」内部
高知医療センター内のホール
「くろしお」の入口と内部

*3「超高速インターネット衛星『きずな』」:
宇宙航空研究開発機構 (JAXA) と情報通信研究機構 (NICT) が共同で開発した超高速インターネット衛星。2013年1月、社団法人日本医師会(日本医師会)とJAXAは、大規模災害発生時の災害対策における超高速インターネット衛星『きずな』の活用方法を検討し、災害医療支援活動への適用に関する実験を共同で実施することを目的に、協定を締結している。
<詳しくはこちら>

*4「高知県医療情報通信技術連絡協議会」:
第6期高知県保健医療計画の「災害時における医療」分野の取組み。県内の13医療機関が集まり、2013年10月、南海トラフ地震等への備えとして、医療情報通信技術を活用した災害医療の充実や、地域医療連携の推進を図ることを目的に組織された。13医療機関については、2ページ目の*1を参照。

*5「SS-MIX」:
Standardized Structured Medical Information eXchangeの略で、「厚生労働省電子的診療情報交換推進事業」において開発された標準規格。

*6「くじらネット」:
高知医療センターが2012年2月末に電子カルテシステムを全面更新したのを機に導入した、登録医を対象としたWeb型電子カルテ閲覧サービス。
<詳しくはこちら>

くじらネット

  • 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
  • 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
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